直撃ミックスゾーンBACK NUMBER
「とにかく前へ」でベルギー撃破!
長谷部が語る“本当にやりたいこと”。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2013/11/20 11:25
「結果がついてきたのは嬉しいですね。チームの進む方向が間違っていないことを再確認できました」と試合後に語った長谷部。
前へ。とにかく前へ――。
日本代表の試合を観ていて、これほど選手たちから「前へ進む」意識を感じたのは、個人的には初めてかもしれない。あえて比較するなら、ザッケローニ監督が初めて指揮を執ったアルゼンチン戦における選手たちの、のびのびとした積極性に通じるものがあった。
11月19日のベルギー対日本。日本の選手たちはチームメートがボールを持てば、躊躇なく追い越していった。それが1人ではなく、2人も3人も続くのである。柿谷曜一朗のヘディングによる1点目も、本田圭佑のシュートによる2点目も、それぞれ右サイドバックの酒井宏樹と左サイドバックの酒井高徳の縦へのランニングから生まれたものだ。
そして3点目も、やはり「前への意識」がもたらしたものだった。
長谷部誠がペナルティボックスの角あたりでボールを持ったとき、右のアウトサイドには酒井宏樹が待っていた。ボールを失わないことだけを考えたら、そこにパスを出すのが無難だっただろう。
だが、キャプテンの選択は違った。
長谷部、柿谷、岡崎のイメージが重なった。
ボックス内に立っていた柿谷に向かって強いゴロのパスを出したのである。柿谷は長谷部の意図を感じ取り、ワンタッチで目の前に走ってきた岡崎慎司にパス。岡崎が豪快にダイレクトで合わせ、日本の3点目が決まった。
ベルギーの追撃を振り切り、3-2での勝利。試合後、長谷部は喜びを抑えるかのように、冷静な口調で言った。
「僕がパスを出すとき、曜一朗から岡ちゃんへのパスの映像が頭の中に見えていたんですよね。あれは3人がイメージを共有して生まれたゴール。今回の2試合は、個人的に行けるところは行くという意識でやりました。守備だけしてればいいわけじゃない。これからも守備のバランスを取りながら、しっかり攻撃もしたい」
前への意識が感じられたのは、攻撃の選手だけではない。センターバックの吉田麻也も、前にスペースがあれば、積極的にドリブルで持ち出そうとしていた。センターバックがボールを運べば、マークを引きつけて中盤の選手たちをフリーにすることができる。ビルドアップするうえで、非常に効果的なプレーだ。