サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「サッカーやるなら勝ちたいでしょ?」
松井大輔が現代表に向けて語ること。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byNoriko Terano
posted2013/11/14 10:30
シーズン前のバルセロナとの親善試合では先制点をアシストするなど、グダニスクでもチームの中心として攻撃のタクトを振るっている。
苦しんでいる現在の日本代表に向けて語ること。
ザッケローニ監督就任以降は2010年のアジアカップのメンバーに選ばれたが、その初戦で負傷し、その後は代表に呼ばれていない。「呼ばれたいという気持ちはあるし、何か間違いがあれば、監督の横にも座ってみたいとも思うよ。でも、とにかく『頑張ってほしい』という気持ちしかない」と語る松井に、2013年は東アジア選手権を除けば、5勝1分8敗と苦しんでいる日本代表について聞いた。
オシム監督時代、欧州でプレーしている選手はなかなか代表へ招集されなかった。だから、2008年のオーストリア遠征で初めて呼んでもらったときは、「ここで結果を残すしかない」という危機感があった。そんな俺にオシムさんは「1対1で仕掛けろ」としか指示を出さなかった。俺の良さを理解したうえで、起用してくれていると感じられたよ。
俊さん(中村俊輔)も「松井にはボールを持たしてやりたい」と言ってくれて。周りが俺のプレ―を理解し、舞台を整えてくれたから、その遠征で結果が残せた。
今の代表も「新しい選手を活かそう」という気持ちでプレーしていると思うし、監督も意図をもって、選手を起用しているはず。だからこそ、新しい選手がチームにフィットしないというジレンマがあるかもしれない。でも新しいチームでプレーするのは、簡単なことじゃない。特に若い選手は、使っていくことで良くなっていくから、使い続けることが大事だと思う。
世界の中で見たとき、日本は強くない。
この年になって改めて感じるのは、経験しているかどうかで、いろんなことが変わるということ。そう考えると、今の代表には南アフリカ大会に出場していた選手もそれほど多くはないんだよね。経験者がいるか、いないかの違いはあると思う。
もちろん選手個々の能力は上がっているけれど、もともとの(世界トップクラスとの)レベルの差が大きいから。今もなお、チーム力、組織力でそこをカバーしなきゃいけない。ボールを繋いで戦っていくのであれば、その質をもっと高めていくべき。
もちろん、シュートを決めるか外すか、みたいな1対1の場面は個の力が問われる部分。だから今、選手が「個の能力を上げなくちゃいけない」という風に考えているのは理解できる。組織力も個人の力も両方上げていく必要があって、どちらかだけでは日本は世界とは戦えない。
南アフリカ大会でベスト16という結果を残せて、フランスに戻った俺は、フランスのヤツらからも賞賛してもらった。フランスはグループリーグ敗退だったからね。でも、日本がフランスよりも強いかと言えばそうじゃない。ただ、南アフリカ大会では日本のほうが良い結果を残しただけの話なんだ。
世界の中で見たとき、日本は強くない。FIFAランキングが44位というのがひとつの現実。前回大会では決勝トーナメントに残ったけれど、次もそうなるかはわからないよ。
W杯という短期決戦の大会では、何が起こるかわからない。
ジャイアント・キリングだって起こりうる。だから、日本代表が「W杯優勝」を目標に掲げるのはいいことだと思う。目標は高いほうがいいからね。
もちろん、将来、W杯で常にベスト16やそれ以上の成績を残せる日が来るかもしれないけど。
そのためにも、W杯では結果にこだわる必要があると俺は思う。