プロ野球亭日乗BACK NUMBER
金まみれのポスティングはいらない!
MLBという「夢」を叶える制度を。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/11/11 10:30
新制度をめぐる問題に決着がつきしだい、メジャー挑戦を表明すると見られる田中将大。獲得の意志を示しているのは14球団、入札額は百億円に達するのではないかと予想されている。
選手は「夢」、球団は「移籍金」という構造が……。
ポスティング制度は、野茂英雄(近鉄からロサンゼルス・ドジャース)や伊良部秀輝(ロッテからニューヨーク・ヤンキース)らの海外移籍を巡るトラブルを経て、米国側からフリーエージェント(FA)の権利のない選手の移籍に関するルール作りを求められてできた制度である。
選手にとって現行の海外FAの権利取得までの9年があまりに長過ぎるので、1年でも早く移籍を実現するための制度だった。
だから選手は「子供の頃からの夢を実現したい」と球団に訴え、一方の球団はFAで海外球団に移籍されれば何の見返りもないが、何年か早く移籍を認めることで莫大な移籍金を手に入れることができる。
選手は「メジャー移籍という夢」を、球団は「移籍金」という現実を得る。それが制度ができたときからの、基本的な構造だったわけである。
選手も球団も、いかに金を稼ぐかが主眼に。
ところが選手の代理人の思惑が強く介在するケースもみられるようになって、いつの間にか“選手”の求めるものは「夢」だけに止まらず、お金を含めた条件になってきた。
そして松坂大輔の移籍をきっかけに、売り手市場となれば移籍金は5000万ドル(約47億5000万円)を越すのが当たり前のように高騰した。これに味をしめた球団は「選手の夢を実現してやりたい」という方便で、いかに高く選手を売るかに躍起になっているところも見受けられる。
ポスティング制度はもはや日本では選手も球団も、いかに金を稼ぐかという、半分はFAに足を突っ込んだような鵺(ぬえ)的な制度となってしまっているのである。
しかし、あまりに高騰しすぎた移籍金にMLB側も音を上げて、制度見直しを求めてきた。ならばこれを機に、ポスティング制度そのものを止めてしまった方がいいのかもしれない。
もともと選手の移籍は球団が主導権を持つトレードか、選手が正当な権利として手にするFAに依って然るべきではないだろうか。