野球クロスロードBACK NUMBER
1万人を集めた盛況のトライアウト。
“独立L組”木田、小林宏の心模様。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2013/11/11 11:40
打者4人に対して安打性の当たりを許さず、経験値の高さを見せた木田(左)と小林宏(右)。現地視察に来た中日・落合GMは選手名こそ明言しなかったが「ここにいちゃいけないメンバーがいた」とトライアウトを総括した。
11月10日の静岡は雨。
悪天候のなか、それでも大勢のファンが合同トライアウトを観戦するために草薙球場に足を運んだ。
今年は何より、「大勢」のスケールがけた違いだった。
入場者数、約1万人――。
昨年までは一塁または三塁側スタンドの一角でしか観戦できなかったこともあり、多くても1000人を少し超える程度だった。
それが、今年はスタンドを全面開放。例年同様、入場料が無料ということもあり立ち見客も数多く、内野席だけで表現すれば「立錐の余地なし」。雨のため会場が室内へと移されても、施設の周りには黒山の人だかり。その盛況は終始変わらなかった。
門戸を広げればこれだけの集客が望める。だからこそ日本野球機構(NPB)は、合同トライアウトを完全な“イベント化”することを決断したのかもしれない。
これまでは、12球団が持ち回りで幹事を担当し、ホーム球場ないし二軍球場を会場として提供していた。それが今年は初めて地方球場で開催された。入場者全員に参加選手が明記されたパンフレットも無料配布されたのも、もちろん初めてのことだ。
非公式だったトライアウトがイベント化した理由。
イベント化の実現。そこには、地域のバックアップがあった。
静岡県と静岡市が「地元球団創設構想」の一環として合同トライアウトの誘致に立候補し、NPBと幹事球団(今年は中日)と三位一体で実行委員会を設立。その名称も、「日本プロ野球12球団合同トライアウトin静岡」とした。
本来、“非公式”であるはずの合同トライアウトを公式イベントとするのは球界の活性化を図る上で意義のあることだ。
しかしながら、プレーするのは球団から戦力外通告を受けた選手。プロとしての生き残りをかけた背水の場で、彼らはこの状況をどのように受け入れているのか気になるところでもある。
「ファンから見られる職業なんだな、と改めて感じさせてくれる場ですよね。これまで陽の目を浴びていなかった選手に対しても、大勢のファンが声援を贈ってくれる。『やっぱり野球を続けたい』と選手に再認識させてくれるのはありがたいです」
2011年にもトライアウトを経験している楽天の加藤大輔は、そうしみじみと語った。