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オリックスの補強策が実に“シブい”!
来季に期待できるこれだけの理由。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/12/25 08:00
今季、就任1年目にして岡田彰布監督が成し遂げた交流戦初優勝。ロッテの“下克上”ばかりが注目されているが、この時のオリックスは交流戦前の4位からの逆襲だった
アマチュアNo.1左腕の高宮が埋める左腕の中継ぎ。
社会人時代は当時のアマチュアNo.1左腕として注目を浴びた高宮は、横浜に希望枠で入団している。ゆったりとした投球フォームからの精巧なコントロールを持ち味とし、すぐさまローテーション入りも期待されていた逸材だった。思うような力を発揮できないまま、ついに昨シーズン途中から左ひじの位置を下げるという決断をした。サイドスローに転向したのだ。
彼のサイドスロー転向を今シーズンになって知ることとなった筆者はその姿を見て、愕然としたものだ。希望枠入団当時の面影をほとんど感じなかったからだ。
だからこそ、このトレードを知った時にちょっとした期待感が湧いたのである。ちょうどオリックスには中継ぎを務める左腕が不足しているからだ。昨年のドラフトで一挙に4人の左腕を指名するほど、オリックスの「左」は人材不足となっている。新人4人が入団したとはいえ、若い選手に即戦力としての期待ができるわけでもない。今シーズンも一、二軍を多くの選手が行き来したが、安定して力を発揮できた選手はいなかった。その中に高宮が入るというのは、欠けていたピースを埋めるものとなるはずなのだ。
高宮は、寺原と同じ記者会見で「左が武器になる。流れを変えられるピッチングをしたい」とその意気込みを語っていた。陽の当らなかった希望枠左腕にとって、飛躍のきっかけにしてほしいものだ。
移籍選手が多すぎるとチームのまとまりが無くなる恐れも……。
オリックスはそれ以前にも、横浜から2人を獲得している。そのうちの1人である桑原謙太朗は'07年ドラフト3位で、奈良産業大時代には完全試合を達成した実績を持つ。横滑りのスライダーが特長の右腕で、右打者を一殺する一芸として指揮官の使い勝手で生きてくるだろう。
移籍はチームにとって、多ければ多いほどにチームを結束させる難しさが増していくものである。その一方、選手にとっては本人自身が変わるきっかけとなることも多い。シーズン途中に広島から移籍してきた長谷川昌幸は「広島でやっているときは、それまでの自分を変えることができなかった。いつまでもスピードにこだわっていましたから。広島を出たことによって、それまでこだわっていたことを捨てられて、思い切ったことができるようになった」と話していたのが象徴的である。
とはいえ、オリックスには抱える難題があるのもまた事実である。
現場とフロントに一体感がなく、どうも一つの目標に向かっているようには思えないのだ。