ロングトレイル奮踏記BACK NUMBER

身軽な立場のハイカーが考えた、
「守るもの」と「幸せ」の意味。 

text by

井手裕介

井手裕介Yusuke Ide

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photograph byYusuke Ide

posted2013/11/02 08:00

身軽な立場のハイカーが考えた、「守るもの」と「幸せ」の意味。<Number Web> photograph by Yusuke Ide

全米で最も深い湖・クレーターレイクで一緒に歩いたGokuさんと記念撮影。親子に間違われた。

「全米が泣いた」 「全米が震えた」

 映画の宣伝などで使われる、こうした文句に胡散臭さを感じてしまうのは、そこに明確な指標、数字がないからだろう。

 メキシコからカナダまで、アメリカ西海岸をバックパッキングによる徒歩で縦断している僕の旅では、案外数字を気にしながら歩いている。

 それは1日に歩く距離(およそ25マイル前後)であったり、行動時間(約10時間ほど)であったり、ゴールまでの日数(残り2カ月ほどでゴールしなければ、降雪に進路を阻まれてしまう)だったり、はたまた1日に4000キロはカロリーを摂るべきであろうなあということであったり。

 自由な歩き旅と言えど、考えることは多い。いや、これだけと言うべきだろうか。改めて、随分とシンプルな日々だとも言えるかもしれない。

 オレゴンに入ってからすぐに、高さと、深さを意識させられた。アメリカ本土最高峰のホイットニー山に登ったのはもう2カ月前のことだが、僕はアメリカで最も水深が深い湖“Crater Lake”(クレーターレイク)を通過した。「通過」といっても、湖の淵に沿ってトレイルを歩いていくだけなのだけれど。

まだ、カナダを目指すには遅くないようだ。

 クレーターレイク国立公園のビジターセンターに向かう。予め1週間ほど前にAshlandの町から送っておいた食糧を受け取るためだ。

 オレゴン州のトレイルでは、大きな町が山の近くにないので、こんな感じで小さな施設に送っておいた荷物を受け取ることで、食糧の補給を済ませながら進む。

 ビジターセンターには、沢山のバックパッカーの姿があった。病気で2週間も停滞してしまい、顔馴染みの仲間が遠くまで進んでしまったので、これは嬉しい驚きだった。まだ、カナダを目指すには遅くないようだ。

【次ページ】 人混みの中に、見慣れた姿を見つける。

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