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'12年に感じた楽天上昇の気配。
星野監督の“若手”と“バランス”。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2013/10/02 10:30

'12年に感じた楽天上昇の気配。星野監督の“若手”と“バランス”。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

念願の初Vに輝き、7度宙を舞った楽天・星野仙一監督。「想像していなかった」優勝の余韻に浸る間もなく、翌日から完封負けが続いた。CSへ向けて再度チームを引き締められるか。

次々と若手を抜擢し、成績上昇の気配を感じた昨年。

 野手では銀次、枡田慎太郎、新人の岡島豪郎、投手では辛島航、美馬学、新人の釜田佳直を積極的に起用し、一軍の戦力に育て上げている。こういう姿は正直、想像できなかった。

『2013年版 プロ野球問題だらけの12球団』ではこんなことを書いた。

「異なる球団で2回優勝している監督は自身も含めて10人いるが、3つの球団で優勝しているのは三原、西本の2人しかいない。もし楽天で優勝したら『異なる3つの球団で優勝』の勲章を手にすることになり、名監督の称号はおのずと醸成されてくるだろう。こんなことを書くのは、楽天に成績上昇の気配があるからだ~」

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 絶対エースの田中将大、新外国人のアンドリュー・ジョーンズ、ケーシー・マギーに焦点が当てられがちだが、バレンティン(王貞治などが持つ1シーズン最多本塁打を更新)、小川泰弘(最多勝と新人王の有力候補)を擁しながら最下位を低迷するヤクルトが証明しているように、1、2人の飛び抜けた選手がいてもチームは強くならない。主役を引き立たせる脇役の名演技があってこそドラマは華やぐのである。

新人・則本の成長は来季以降への希望でもある。

 今季は新人・則本昂大を田中に次ぐローテーションの柱に起用し、則本は14勝7敗(9月29日現在)の好成績で報いた。則本が第2エースに君臨することは今季だけの問題ではない。メジャー移籍が有力な田中がいなくなったあとの来季以降の楽天投手陣の陣容をデザインする上で、釜田とともに欠かすことのできない人材である。こういう負けん気の塊のような本格派を叱咤激励によってやる気にさせる掌握術が、星野監督は本当にうまい。

 ドラフト(新人補強)はどうだろう。1、2位の上位指名選手がどれだけ戦力になっているかが、成功・失敗の目安になるが、楽天は田中、永井怜、塩見貴洋、美馬、則本以外、成功選手と言える選手が少ない。

 多くの球団の上位指名は「即戦力」(大学生&社会人)と「投手」に集中するので、異なるチーム作りを目ざすなら「高校生」と「野手」がキーワードになる。常に高校生野手を指名するのではなく、数年に一度、1位で高校生野手を指名するくらいの冒険心を持ったほうが球団は強くなる。楽天はその点、依然として臆病だ。

【次ページ】 中日、阪神時代のドラフトに見るバランス感覚。

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