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澤、近賀復帰でナイジェリアに完勝。
DFには光明、課題は攻撃の新戦力。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byGetty Images
posted2013/09/28 08:01
澤の復帰はチームにとってもちろん大きい。しかし新戦力が彼女のポジションを脅かしてこそ、なでしこは2015年のW杯へ向けて進むことができる。
ナイジェリアとの2連戦を、ともに2-0で勝利したなでしこジャパン。
しかし、なかなか対戦機会のないアフリカ勢の中でFIFAランク最上位国と期待されていたナイジェリアは、歯応えのある相手とは言い難かった。
そもそも、空路はるばるやってきた彼女たちが羽田空港に降り立ったのは、第1戦前日の午前0時(!)。それから長崎に移動して夜にはスタジアム練習を行い、翌日はもう試合本番である。これでは時差ボケやコンディションの調整、日本の気候への適応などできたものではない。
結局ナイジェリアはこの強行日程に祟られ、滞在期間を通して体調を万全に持って行くことができなかった。
長崎での第1戦、千葉での第2戦とも、身体能力の高さを垣間見せるものの、後半になると体力や集中力ががくんと落ちてしまっていたのである。ナイジェリア代表側の都合なのか、元々そのような日程で招待していたのかは不明だが、いずれにしても両者が公平な条件で戦ったわけでないことだけは確かだ。
ただそうした調整不足を抜きにしても、ナイジェリアが相手としてふさわしかったかどうか……。
数人の選手は時おり足の速さや当たりの強さを見せるものの、ケタ外れの身体能力に驚かされる、といった場面はほとんどなかった。そしてなにより攻守に渡って組織化されておらず、個々人のポテンシャルやひらめきに頼ったプレーに終始していたのである。
ナイジェリアとの対戦よりも合宿に意義があった。
だがそれでも、今回のナイジェリア戦とそれに伴う代表合宿は貴重な機会だった。
今後、なでしこジャパンのコアメンバー入りに名乗りを上げてもらいたいと佐々木則夫監督が期待する中堅や若手に、トレーニングや試合を通して代表の空気を吸わせ、刺激を与えた。そして、負傷明けのベテラン選手の回復具合を確かめることもできた。つまり今回の10日間に及ぶ代表活動は、ふたつの親善試合より、むしろ様々な立場の選手を招集した長崎と千葉での合宿自体にこそ意義があった。
ナイジェリア戦は、キャンプ期間中に組み込まれたトレーニングマッチのような位置づけだったと受けとめるべきなのだ。