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ライバル萩野公介を制し、金メダル。
瀬戸大也“大逆転”までの1年間。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAFLO

posted2013/08/11 08:01

ライバル萩野公介を制し、金メダル。瀬戸大也“大逆転”までの1年間。<Number Web> photograph by AFLO

4つの泳法の総合力が問われる個人メドレーでの金メダルは、五輪、世界水泳を合わせても日本人初の快挙だった。

「萩野と(2016年の)リオデジャネイロ五輪で金メダル争いをしたいです」

 長年のライバルであり、日本チームの中で大きな注目を集めていた萩野公介に触れつつ、そう語っていたのを思い出す。

 きっとその言葉の奥底には、「自分が金メダルを獲る」という思いも込められていたはずだ。

 そして出場したバルセロナの世界選手権。400m個人メドレーの決勝に萩野とともに出場した瀬戸大也は、リオまで待つことなく金メダルを手にした。

 そのレースは、隣のコースを泳ぐ萩野との競り合いとなった。

 バタフライを抑え気味に入った瀬戸は、苦手としている2種目めの背泳ぎを終えた時点で萩野に2秒19の差をつけられて2位。続くは得意の平泳ぎ。ここで一気に萩野を抜いてトップに立った。

 最後は萩野が得意とする自由形だ。瀬戸は一度は萩野にかわされ、350mのターンでは2位。だが、残りの50mで萩野を再び抜き返す。海外勢の追い上げも許さず、トップでゴールすると、右腕を水面に叩きつけて喜びを爆発させた。

ロンドン五輪を逃して、失意に沈んだ日本選手権。

 1種目めのバタフライから冷静さが目立ったレース運びを、瀬戸自身も手放しで評価した。

「落ち着いて前半から入ることができました。最高のレースができたと思います」

 さらにこうコメントしている。

「大会では、公介が目立っていて悔しかったので、一発逆転を狙っていました」

 今大会での日本勢唯一の金メダルは、昨年の雪辱を果たすものでもあり、時間をかけて築き上げた地力を表すものでもある。

 小学生の頃から萩野と競り合ってきた瀬戸だが、「いちばん大きな挫折」と語るのが、ロンドン五輪がかかっていた昨年の日本選手権である。

 瀬戸は、代表候補に名前を挙げられるだけの実力をつけて選考に臨んだ。だが個人メドレーの200m、400mともに3位に終わり、ロンドン行きを逃す。大会の前月、インフルエンザにかかった影響もあっただろう。それでもロンドンに行けなかった事実は残った。

 その後、失意に沈んだ。練習していても、以前のように懸命にはなれない時期が続いた。

【次ページ】 ロンドンでの萩野の泳ぎが転機になった。

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