スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
今季と来季のジャイアンツ。
~サンフランシスコ王朝誕生の予感~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byNaoya Sanuki
posted2010/11/07 08:00
ニックネームは「ザ・フリークス」。身長は松坂大輔より低い180センチながら、全身のバネを大きく使い、思い切り前へ踏み込む独特の投球フォームで150キロ後半の速球を投げ込む
2010年の大リーグが終わった。サンフランシスコ・ジャイアンツのワールドシリーズ制覇で幕を閉じた。開幕前、この結果を予測した人は皆無に近かったのではないか。私も3月には、ジャイアンツはナ・リーグ西地区で3位あたりだろう、と高をくくっていた。これだから、勝負事は興味が尽きない。
しかしここ数年、大リーグは戦国時代と呼びたくなるようなありさまだ。
2005年以降、ワールドシリーズに進出した球団を頭のなかで並べると、ついこうつぶやきたくなる。
驚いたことに、その数は11球団にも上る。6年間で11球団。2度出場したチームはフィリーズだけで、あとは見事に猫の眼である。アストロズ('05年)やロッキーズ('07年)の存在などは、もはや忘れかけられているのではないか。'90年代後半から2000年初頭にかけて黄金時代を築いたヤンキース('96年から'01年の6年間で5度進出した)のような例は、当分見られないのかもしれない。
投手陣の若さは強みだが、固定化できない打線が弱点。
それとも、ジャイアンツは久々に「王朝」を打ち立てられるのだろうか。
もし実現の可能性があるとしたら、最大の根拠は先発投手陣の若さだ。
エースのT・リンスカム(26歳)を筆頭に、ジャイアンツの先発4本柱は全員が27歳以下である。M・ケインが26歳、J・サンチェスが27歳、M・バムガーナーが21歳。かつての風雲児B・ジート(32歳)に往年の輝きは見られないが、抑えのB・ウィルソン(28歳)は来季以降も健在だろうし、中継ぎにもS・ロモ(27歳)やD・ランズラー(25歳)といった若手が育ってきた。
しかし、問題は打線だ。
ポストシーズンの戦い方を見てもわかるとおり、ジャイアンツは日替わりの打順で苦境をしのいできた。今季限りで退団が確実なヴェテラン遊撃手E・レンテリーアがワールドシリーズのMVPに輝いた一事をもってしても、その頼りなさは察しがつくだろう。