スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
今季と来季のジャイアンツ。
~サンフランシスコ王朝誕生の予感~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byNaoya Sanuki
posted2010/11/07 08:00
ニックネームは「ザ・フリークス」。身長は松坂大輔より低い180センチながら、全身のバネを大きく使い、思い切り前へ踏み込む独特の投球フォームで150キロ後半の速球を投げ込む
補強と育成の両輪が王朝誕生の推進力となる。
さて、そのレンテリーアが抜け、A・ハフとJ・ウリーベがFAでチームを去るとなったら、内野は当然寂しくなる。'09年にブレイクした「カンフー・パンダ」ことP・サンドバルが故障から復帰すれば三塁は安泰だが、遊撃と一塁の穴はだれが埋めるのだろうか。
私の観測では、候補がふたりいる。
遊撃手は、今季ツインズで働いてFAの資格を得たJ・J・ハーディが有力だ。以前の長打力は失われたようだが、攻守のバランスが取れた選手だけに、獲得できればレンテリーア以上の活躍は十分に見込めるだろう。
一方の一塁はハフと再契約を結ぶことになるのだろうが、新人B・ベルトの台頭を期待したい。'09年ドラフト5巡目で加入したベルトは、今季マイナーリーグで3割5分2厘/23本塁打/112打点の好成績を残している。シーズン終盤には、トリプルAに昇格して13試合で4本塁打。順調に伸びれば、今季のB・ポージー捕手に続いて、次代のジャイアンツを担う存在になるのではないか。
最大の懸念材料はライヴァルの台頭よりも投手陣の故障。
とまあそんなわけで、私は来季のジャイアンツにかなり期待をかけている。「投手の年」の傾向はまだ当分続くはずだし、ナ・リーグ西地区を見渡してみても、強力なライヴァルがいまのところ見当たらないからだ。
まずパドレスの強さは本物とは思えないし、ロッキーズはムラが激しい。ドジャースは振り出しに戻った感があるし、ダイヤモンドバックスも工事中の印象を拭いがたい。鬼も笑い出す来年の予想だが、ジャイアンツがなによりも警戒すべきは、若手投手陣の故障発生だろう。私が危惧しているのは、身体の線が細いリンスカムやサンチェスの健康だ。彼らが来季の出だしさえ無事に乗り切れば、「王朝」の予感は現実に近づいていく。