野球善哉BACK NUMBER
オリックス救援陣の直球はなぜ速い?
本屋敷トレーニングコーチの存在価値。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/07/29 13:00
選手を指導するオリックス・本屋敷コーチ(左)。自身初となる公式サイト( http://shunsukemotoyashiki.com/ )もこの6月から公開となり、選手とはまた違った視点でチームの雰囲気を伝えている。
ブルペンに行く前、必ず投手に施しているメニューとは?
オリックスのトレーニングメニューの中には、その選手の潜在能力を最大限引き出すことをテーマとした内容が盛り込まれているということらしい。もっとも、暑さがピークとなる夏場だと、「トレーニング」というより、常に安定して実力を引き出すための「コンディショニング」という言葉が重要にはなってくるようである。
本屋敷コーチは続ける。
「もともと持っている力があって、それを最大限引き出せるようにはしますけど、疲れが出てくると、またそのやり方が変わってきますので。(夏の)今の時期は安定して力を出すための“コンディショニング”を意識してやっています。試合後はプールエクササイズを取り入れるようにして、試合前だと、最大の力が発揮できるようなメニューをブルペンに行く前に必ずさせています。主なテーマは、股関節の柔らかさ、体幹の強さ、肩甲骨の柔らかさ、ですかね。そのエクササイズをした後、その動きを投球動作につなげていく感じでブルペンに行ってもらっています」
選手の不調の原因を見つけるには、まずトレーナーに聞け!?
普段、現場で取材をしていてひしひしと感じるのは、日本球界でこそもっとトレーニングコーチの存在価値を積極的に認めていくべきではないかということだ。
本屋敷コーチはアメリカにわたり最新のトレーニング学を研究してきた経歴を持つ。日米の野球の違いも熟知しながら、自身のトレーニングメソッドを確立しようとしている。日本球界には根性論のような古い意識が根強く残ってはいるが、本屋敷コーチはそうした昔ながらの流れも受け入れつつ、コンディショニングコーチとしての能力がフルに発揮できるよう、地道な努力を続けている。
森脇浩司監督とのコミュニケーションの取り方ひとつとってみても、その熱心さが伝わってくる。
7月26日の西武戦の試合前、いつになく険しい表情で2人が話しこんでいる場面があった。
彼らが話し合っていたのは、夏場になって疲労が蓄積し、コンディションを崩していたある選手のことだった。
「『選手のこの部分が良くないのは、彼の練習内容になにか足らない部分があるんじゃないか』と言われまして。監督さんの方から、注意して見ておいてくれと。よく話すのは、ある選手に結果が出ない理由は、フィジカルに原因があるのか、それともメンタルなのかという話ですね。『調子が悪いから走らせる』という風に、昔はそんな考え方が多かったんですけど、そうじゃなくて、ちゃんと不調の原因が何か見つけてやらないと、良いものも悪くしてしまうことだってあるかもしれませんからね。
森脇監督はきちんとコミュニケーションをとってくれますし、僕の意見もよく聞いて下さる。『○○という投手は疲れているので、練習は早く切り上げた方がよい』と報告すると、監督はしっかり聞いてくれますので。そういう意味では、僕らの影響力はすごくあると思います」