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大物レブロンのヒート移籍の成否は?
試されるNBAヘッドコーチの管理能力。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byNBAE/Getty Images

posted2010/11/01 10:30

大物レブロンのヒート移籍の成否は?試されるNBAヘッドコーチの管理能力。<Number Web> photograph by NBAE/Getty Images

左からボッシュ、ウェイド、レブロン。セルティックスとの開幕戦を落とし、力無くうなだれる3人の王様たち

「掃除人」ボッシュのモチベーションは保てるのか?

 アメリカの雑誌のインタビューにもボッシュは、

「これまでの自分の役割とは違うものを受け入れなければいけない。それは簡単なことではないだろうが、チームが勝つためにベストを尽くす」
と話している。

 ある意味、自分は他のふたりとは格が違うと認めているのだ。

 NBAの世界で優勝するには、「掃除人」が必要なことは歴史が証明している。得点能力はなくとも、リバウンドやブロックなど、ディフェンスの能力が高い選手がいたチームは頂点を制してきた。

 分かりやすい例でいえば、マイケル・ジョーダンのブルズ。ホーレス・グラント、デニス・ロッドマンというディフェンスに特化したスペシャリストがいたからこその優勝だった。

 果たしてボッシュがディフェンスに「仕事のやりがい」を感じることが出来るのだろうか? 

 セルティックスとの開幕戦を見る限り、シーズン序盤は苦戦しそうな雰囲気だ。

 ボッシュの仕事へのモチベーションを高めることが、スポールストラ・ヘッドコーチの大きな課題になるだろう。まだ40歳の指揮官には荷が重いように思えるのだが……。

今季のNBAのキーワードは「労務管理」?

 ヒートだけではなく、今季のNBAはヘッドコーチの仕事として労務管理が重要になっているチームが多い。

 レイカーズと開幕戦を戦ったロケッツは、姚明の「プレー時間」が大きな問題になっている。昨季は足首のケガでシーズンを棒に振ってしまったが、いまも爆弾を抱えている状態なのだ。

 そこでチームドクターと経営陣が下した決断は「姚明の出場時間は1試合平均24分まで」というもの。つまり、試合の半分しか出られない。たとえば26分プレーしたら、次の試合では22分に調整していく。チーム関係者の話ではプレーオフは分からないが、レギュラーシーズン中はしっかりとプレー時間をモニターしていく方針だという。

 アデルマン・ヘッドコーチは大ベテランだが、煩雑な労務管理を押しつけられた気がしているのではないか? なんとなく残業時間をコントロールする係長という感じがしないでもない。

 ただ、こういった選手のプレー時間を制限していくことが、シーズン全体を俯瞰した時にチームの利益に働くというのが現在のNBAのチームの考え方のようである。ベテランも酷使せず、適度に休みながら戦わせる。

 そうなると中間管理職であるヘッドコーチの負担が増えてくるということになる。

【次ページ】 経営陣と選手の狭間に立たされるヘッドコーチの悲哀。

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