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ブンデス4年目の内田篤人が見せた、
生き残るための“小さな変化”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2013/07/24 10:31
内田はオフにテレビの収録などもこなしながら、しっかりトレーニングに励んでいたという。14日、「(すぐに)練習やれと言われてもぜんぜんできますし。チームは始動しているんで」と語り成田を出発、15日にはチームに合流した。
この国では、沈黙は悪であることも知っている。
今シーズンも状況は似通っている。シャルケの選手として唯一、コンフェデレーションズカップに参加したために、新シーズンの始動はチームの中で最も遅くなった。だが、そんな中で、内田は練習後のランニングにひっそりと取り組んでいる。フィジカルコーチに相談しながら、チームの練習が終わった後に一人、ピッチを走る。些細なことかもしれないが、自ら志願してのランニングをこう語る。
「俺、そんなにベラベラしゃべるほうじゃない。走るのは、自分が遅れて合流しているから。自分のコンディションについて、ちゃんと考えてやっているんだよというのを周囲にわかってもらうため。それにはみんなと同じことをやっていてはダメ。俺だけ合流が遅いんだから。コンフェデに参加していたからだというのはみんなもわかっているだろうけど、プラスアルファでやっていくしかないよね」
ここに、内田の変化がある。
試合に起用されないときに「どうして自分を使ってくれないのか? 自分を起用してほしい」と監督に話しに行くのは、ドイツでは当たり前のことだ。ただ、そんな行為は内田の流儀に反する。
この国では沈黙は悪と評されることも知っている。淡々とやっているだけでは、やる気がないヤツだととられかねない。それならば、ピッチの上でやれることをやる。
内田とポジションを争う選手の獲得を目論むシャルケ。
内田の見せたわずかな変化は、自らのサッカー選手として大切な部分は守りつつも、ドイツに生きるフットボーラーらしくなってきたことを象徴しているのかもしれない。
8月9日から始まる今シーズン、前年王者のバイエルンはグアルディオラを新監督に迎えた上にマリオ・ゲッツェとチアゴ・アルカンタラという2人のMFを加え、凄みを増している。どうにかレバンドフスキの残留にこぎつけそうなドルトムントもMFムヒタリアンにFWオバメヤンを補強するなど、移籍市場で近年にないほど積極的に動いて攻撃の強化をはかっている。
シャルケも昨季13得点をあげたFWシャライをマインツから獲得した。エースのフンテラールさえ、ポジションは安泰ではないのだ。内田は今シーズンも右サイドバックのレギュラー候補と目されている。しかし、各ポジションにレギュラー級の選手を2人ずつ抱えたいと考えているクラブは、ヘーガーとは別に内田とポジションを争うことができる右サイドバックの獲得をひそかに目指しているという。それが海外のチームの厳しさだ。