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史上稀に見る投手偏重の傾向が!
2010年ドラフト指名候補を一挙紹介。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byTamon Matsuzono
posted2010/10/22 10:30
東京六大学を代表する剛速球右腕の早大・大石達也。阪神、横浜、ソフトバンク、オリックス、楽天などが1位指名候補に挙げており、競合は必至である
過去45回のドラフトで、1位指名すべてが投手だった年は'86年、'93年の2度ある。考えてみてほしい。スターティングメンバー9~10人のうち、投手はたった1人しかいない。支配下登録される選手も投手、野手の比率は半々か、若干野手のほうが多い。数少ない投手を野手全員でもり立てる、というのが野球の持つ基本構造なのである。
しかし、ドラフトでは投手が多く指名される傾向にあり、とくに1、2位の上位では圧倒的に投手の占める割合が高い。ディフェンス重視が行き過ぎた日本野球の現状を表しており、筆者としては改善すべきではないかと思う。
'02年から昨年までのドラフト上位指名を以下に記す。ただし、「高校生ドラフト」と、「大学生・社会人ドラフト」を分離して行った'05~'07年は資料的価値がないので除外してある。
'02年 1位→投手7人、野手5人 2位→投手9人、野手3人
'03年 1位→投手9人、野手3人 2位→投手8人、野手4人
'04年 1位→投手9人、野手3人 2位→投手11人、野手1人
'08年 1位→投手7人、野手5人 2位→投手8人、野手4人
'09年 1位→投手8人、野手4人 2位→投手8人、野手4人
[註] '02年の近鉄1位坂口智隆(神戸国際大付)、'04年ダイエー1位江川智晃(宇治山田商)は
野手としてカウントした
投手上位がさらに顕著になる今年のドラフト。
1位の投手占有率は67パーセント、2位は何と73パーセントにまで達する。この投手上位が今年はさらに過激に展開されそうなのである。
上位候補の名前を挙げていくと以下のようになる。プロ野球志望届を提出していない高校生、大学生は対象外とした。
<大学生>
塩見貴洋(八戸大・左左) 181/80
中村恭平(富士大・左左) 185/74
*阿部俊人(東北福祉大・右左) 180/73 遊撃手
斎藤佑樹(早大・右右) 175/75
大石達也(早大・右左) 182/76
福井優也(早大・右右) 178/78
加賀美希昇(法大・右右) 186/88
*田中宗一郎(立大・右左) 175/85 外野手
澤村拓一(中大・右右) 183/90
南昌輝(立正大・右右) 182/85
乾真大(東洋大・左左) 175/74
*伊志嶺翔大(東海大・右右) 178/78 外野手
大野雄大(佛教大・左左) 182/72
榎下陽大(九州産大・右右) 178/70
<高校生>
*後藤駿太(前橋商・右左) 180/75 外野手
一二三慎太(東海大相模・右右) 184/85
*山下斐紹(習志野・右左) 180/78 捕手
*吉川大幾(PL学園・右右) 175/70 遊撃手
*山田哲人(履正社・右右) 180/73 遊撃手
岩本輝(南陽工・右左) 180/80
宮國椋丞(糸満・右右) 184/74
<社会人>
佐藤達也(Honda・右右) 178/73
牧田和久(日本通運・右右) 178/73
榎田大樹(東京ガス・左左) 179/81
岩見優輝(大阪ガス・左左) 177/80
安部建輝(NTT西日本・右右) 179/80
七條祐樹(伯和ビクトリーズ・右右) 180/80
[註] 名前横の*印は野手。数字は身長/体重。
候補の幅をだいぶ広げて紹介した。このうち投手は20人、野手はわずか7人である。来年に目を転じると、伊藤隼太(慶大・外野手)、土生翔平(早大・外野手)、井上晴哉(中大・一塁手)、小林誠司(同志社大・捕手)、高橋周平(東海大甲府・遊撃手)、丸子達也(広陵・一塁手)、北川倫太郎(明徳義塾・外野手)と、高校・大学に野手の逸材がいるので、今年のような投手偏重はない。要するに、2010年ドラフトは史上稀にみる投手偏重、それも大学生に人材が偏った年だということになる。