リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
大勝続きでもいまだ「覚醒」せず。
モウリーニョのレアルが抱える爆弾。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2010/10/20 10:30
モウリーニョ率いるレアルは7節を終えた時点で2位と勝ち点1差ながら単独首位。リーガ全20チーム中、唯一無敗のチームではあるが……
個人技頼みの攻撃では堅牢な防衛網を突破できない。
敵が守備を固めると、レアルの攻撃力は途端に鳴りを潜める。イグアイン、ディマリア、ロナウド、エジルの4人が互いに限られたスペースを消しあってしまう。組織で相手を崩すことができず、個人技に頼らざるを得なくなる攻撃では、確率の高いシュートを放つためのスペースを生むことができない。
無得点に終わったマジョルカとの開幕戦と5節のレバンテ戦、セットプレーで辛うじて勝ち越したソシエダ戦(3節)に代表されるように、数え切れないほどシュートを放つものの、そのほとんどはコースを遮断されたものだった。DFに消されていないコースにシュートを打っても、そこは当然GKが対処できる。それ以外は枠を捉えられず、ゴールラインを越えていった。
もし今のレアルが、モウリーニョがこれまで作ってきたチームと同じ堅守とカウンターを機能させているのなら、地元メディアが報じるとおり、「覚醒した」と言えるかもしれない。だが、「覚醒」の根拠は大量得点だけだ。その大量得点をもたらしている攻撃は、相手の出方次第では全く機能しなくなる。
レアルを本当に「覚醒」させるために必要なのは何か?
ADVERTISEMENT
イグアイン、ディマリア、ロナウド、エジルの組み合わせを続ける限り、モウリーニョは他のクラブで構築してきた守備力を構築できないだろう。そこに、モウリーニョがレアルで失敗する危険性が潜んでいる。
サイドのロナウドとディマリアは守備意識が低い。
レアルが簡単にサイドを押し込まれるのは、単純に守備が手薄だからだ。では、ロナウドとディマリアの代わりに守備意識の高い選手を起用したらいいかというと、そうでもない。個人技で違いを生み出す2人を外すと、ただでさえ少ないレアルの攻撃オプションがさらに減ることになる。
今のところ、チーム全体の守備を充実させ、攻撃オプションも失わないようにするには、ロナウドとディマリアの守備力を向上させる以外にない。難しいミッションではあるが、それこそモウリーニョが最も得意とする仕事かもしれない。