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「強引さ」こそザックジャパンの旗印!
90分間ゴールを目指し続けた日韓戦。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2010/10/13 12:25
強引なプレーを「是」とする雰囲気がチームにある。
ザッケローニの考えはあくまで守備は攻撃につなげるためのものであり、その攻撃は手順ではなく、あくまでゴールという結果にこだわっている。
「君たちはいいテクニックを持っているが、ゴールに向かう姿勢が足りない」――。
これは今回の初合宿でザッケローニが選手たちに言った言葉だ。どうやって崩すかではなく、ボールを奪ったらまずもってゴールを目指すべき。彼は、選手たちにそう説いたのだった。
この日の日本は、強引とも思えるドリブルも何度かあれば、近くにいる味方を使うことなくシュートに持ち込む場面も少なくなかった。ただ、チームがこれらを「是」としている雰囲気がある。ドリブルで仕掛けて取られたら、周りがそのボールを取り返せばいい、と考えているようだった。試合終盤、韓国のボールになった瞬間に、再び本田圭佑が奪い取って素早くシュートまで持っていくシーンから、その意識が強く感じられた。
もちろん無得点だったことを考えれば、シュートの精度の問題や、もっとサイドを広く使うべきなのにできなかった点は改善しなくてはならない。ただ、ザッケローニの志向は今の日本代表にマッチしていると感じさせてくれる。韓国戦をこのソウルの地で見て、筆者はその思いを強くした。
細貝萌や金崎夢生を投入した狙いとは?
采配もまずまずではなかったか。後半途中から細貝萌を投入して、システムを4-3-3に変更する手を打ってきた。相手に最終ラインとボランチの間のスペースを使わせないようにという守備的な狙いもあったが、どちらかと言えば、長谷部と遠藤保仁のポジションを上げる攻撃的な意図のほうが強かったであろう。金崎夢生を入れて3トップ気味にして攻撃に厚みを加え、ライバルを相手に勝ちにこだわった点も、選手たちのモチベーションを90分間持続させた要因だと言える。
年内のテストマッチはこれで終了。ザッケローニの目は来年1月に行なわれるアジアカップに向けられている。
「試合のなかでずっと横パス、ずっと縦パスでもダメなわけで試合の流れをきちんと読んで、きちんと状況判断に即した戦術を用いること、それができるようになりたい。特に大切なのは、最後の数分になっても攻撃の姿勢を崩さないことだ」
ザッケローニの目指す方向性が、アルゼンチン、韓国との2試合からはっきりと見えてきた。そしてその道が、日本に新たな希望を感じさせてくれていることは間違いない。