日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ザックがアルゼンチンに仕掛けた罠。
“岡田ジャパン+α”で韓国にも勝つ!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2010/10/12 12:00
埼玉スタジアムの記者席で目を通したアルゼンチン戦の公式パンフレットに、日本代表新監督アルベルト・ザッケローニのインタビューが掲載されていた。就任会見でも強調していた「攻守のバランス」についての言及が、実に興味深かった。
「守るというよりは、ボールを奪い返すというコンセプトです。攻撃をしているときには、ボールを保持している選手の近くに味方がサポートして、ボールを失ったときにはすぐに奪い返せるような態勢、姿勢が大切なのです」
ザッケローニのこのポリシーは、ほぼベストメンバーで来日した世界ランク5位のアルゼンチン代表を相手にした初陣で、垣間見ることができた。最終ラインを高めに設定して全体をコンパクトにし、高い位置でボールを奪ってショートカウンターにつなげる。攻撃でミスをしても、選手たちのサポートによってボールを奪い返すシーンが多かった。
まさに「攻守のバランス」の勝利だった。
本田、香川、岡崎の献身的なプレーがアルゼンチンを封じた。
特に注目したいのが、4-2-3-1の2列目の中盤3枚へ入った本田圭佑、岡崎慎司、香川真司らがプレスの一番手としてパスの出し手にプレッシャーをかけパスコースを限定させたことで、アルゼンチンの攻撃を未然に防ぐことに成功していたことだ。豪華すぎる世界的なアタッカーに、いい形でボールを渡さなかったことが大きかった。
指揮官も試合後の記者会見で「マスチェラーノ、ブルディッソにボールが入ったときに、本田、香川、岡崎の献身的なプレーがチームを助けた」と上機嫌に語っていたほどだ。
高い位置でボールを奪うことによって、アルゼンチンは前に出てこられなくなった。相手のサイドバックが上がれなかったのは、縦に速い攻撃の意識を持った日本のショートカウンターが効いていたからでもある。
この日のボール支配率は、アルゼンチンの61%に対し、日本は39%。
試合の終盤、全体に間延びした感があって押し込まれる時間はあった。しかし、ここまで相手に長くボールを持たれながら、日本の守備が乱れることが少なかったのは何故か。
それはザッケローニが選手たちに指示した約束事が、効力を発揮していたからだ。