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<全米オープンで得た自信> 松山英樹 「いつかメジャーで勝てる日が来る」
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byTaku Miyamoto
posted2013/06/27 06:01
中嶋、藤田ら先輩ゴルファーも認める潜在能力の高さ。
また、5月の日本プロゴルフ選手権で最終日を2位に4打差をつけた単独首位で迎えながら、大逆転を許して敗れると、続くダイヤモンドカップでは耐えに耐えて首位を守り、逃げ切りに成功した。
しかもこのダイヤモンドカップでは、コースを全米オープンが開催されるメリオンGCに見立てるという試みをする。ティショットでドライバーを握る機会をより減らし、確実にフェアウェーをキープしていくコースマネジメントを自身に課していた。
与えられた宿題を一つひとつクリアしていく生真面目な小学生のように、目指す目標に向かって日進月歩で成長していく。その様が見て取れるからこそ、より強さが際立ち、先輩ゴルファーをも唸らせている。同大会で松山と優勝を争った中嶋常幸は、松山のゴルフを高く評価した。
「日本のことわざに『短気は損気』という言葉があるけど、彼はその真逆だよね。根気強い粘り強さがあって、決して無理をしないし、できることをしっかりやる。ゴルフの質が高い。だからこそ、毎週のように優勝争いに絡んでくるんでしょう」
また、昨年の賞金王・藤田寛之は、石川と松山をこう比較したことがあった。
「現段階のゴルフの完成度は遼が上でしょう。ただ、松山は技術がまだまだ荒削りな分、のびしろは大きいような気がしますね。あのパワーと、速いグリーンであってもボールを止められるテクニックは、マスターズなど、海外メジャー向きのゴルファーだと思います」
今大会ベストスコアをマークして充実感を得た全米OP最終日。
ショットとパッティングの微修正を行なって臨んだ全米オープン最終日は、前日までとは対照的な松山の表情があった。
今大会のベストスコアに並ぶ67(パー70)をマークし、日本人最高位となる10位タイと大きく順位を上げたのだ。ティショットが左右にぶれることが極端に減り、速くて大きくうねったグリーンを攻略していった。
プロゴルファーとしての現在地を推し量る格好の舞台である全米オープンは、優勝スコアが「イーブン」に設定される世界一過酷なトーナメントだ。いかにスコアを伸ばすか以上に、いかにボギーを叩かないかが上位進出のカギを握る。
難コースに立ち向かい、跳ね返されながらも、最終日を終えると充実感を口にした。