沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
ジェンティル、ゴールド、フェノー。
宝塚記念、“最強の4歳”はどの馬だ!?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKiichi Yamamoto
posted2013/06/21 11:30
前走の天皇賞・春では、1番人気のゴールドシップに0.9秒の大差をつけGI馬の仲間入りを果たしたフェノーメノ。昨秋のセントライト記念でも勝利を飾った2200mの距離で再びその力を証明できるか。
ジェンティルの不安材料をしいて挙げるなら……。
昨年、牝馬三冠を制したジェンティルドンナは、3歳牝馬として史上初めてジャパンカップを勝った。これはとてつもない快挙であり、5歳のときジャパンカップを勝ったあのウオッカでさえ、3歳のときは4着に敗れている。
今年の始動戦に選んだドバイシーマクラシックでは、道中掛かってしまい、終始外を回らされたことも響いて2着に惜敗。しかし、典型的な「負けて強し」の競馬だった。
帰国後、じっくり時間をかけて調整され、栗東トレーニングセンターの坂路コースで行われた本追い切りでは、軽く仕掛けられただけで51秒8の好タイムを叩き出した。
「思った通りの調整ができました。体調面で何の不安もありません」
と管理する石坂は自信をうかがわせる。臨戦態勢は整った。
しいて不安材料を挙げるなら、初めて56kgを背負わされることと、「牝馬である」ということぐらいか。牝馬というのは、どんなに強い馬でも、原因不明の敗戦を喫することがままある。いくら理由を探しても見つからず、結局は「牝馬だから」と言うしかないような負け方。そして、何の予兆もなく、あるとき突然走るのをやめてしまったりする。
ジェンティルもいつかはそうなるかもしれないが、ただ、今ではない、という気がする。
総合力ではほかの二強とそう差はないのだが、「勝ち切る力」では、この馬が突出している。「終わってみれば一強だった」ということになるかもしれない。
主戦の内田博幸も手応えを感じるゴールドシップ。
その馬名から「不沈艦」と呼ばれたゴールドシップは、単勝1.3倍の圧倒的1番人気に支持された前走の天皇賞・春で、よもやの5着に沈んでしまった。
ペースが速かろうが遅かろうが、序盤は後方をマイペースで走り、自分に都合のいいタイミングだけを計ってスパートし、前をまとめて呑み込んでしまう……という、この馬の武器が不発に終わった。
昨年の有馬記念で見せたような、無尽蔵のスタミナを背景にした超ロングスパートは、コーナーを回りながらブッ放すことができる小回りコースでこそ効力を発揮するのか。また、私たちは、この馬の母の父であり、同じ芦毛の王者として君臨したメジロマックイーンの姿を勝手にダブらせ、過度の期待をかけてしまっていたのか。
いや、そうではないだろう。確かに「風格」ではマックイーンに及ばないが、皐月賞で見せた鋭さと、菊花賞と有馬記念で他馬をねじ伏せた力強さは、同じ時期のマックイーンを凌駕している。
結果論だが、あまりに動けなさすぎた天皇賞のときは、ハードトレーニングで仕上がりすぎていたのかもしれない。
それに対して今回は、付きっ切りで稽古をつけている主戦の内田博幸が引っ張り切れないほどの活力を見せている。
「馬がすごく前向きになっていて、自分から動いて行った」
と内田は確かな手応えを得ているようだ。