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輝きを取り戻した岡崎慎司は
コンフェデ杯でゴールを奪えるか?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/06/13 10:30
「諦めないとか気持ちや意識の部分はあるけど、やっぱり最後まで走ったからこそパスが来ると……」と、ゴールを決めたイラク戦後にコメントした岡崎。
チームのために自分を殺す必要はない。
そんな効果的なプレーができたのには、伏線があった。
ドイツ杯の(公式戦)3試合前のフュルト戦で途中交代を命じられたあと、岡崎はラバディア監督と会談を持った。そこでの話によって、苦手なことに目を向けるのではなく、自分の得意なことに目を向け、それを試合で出す必要があると考えるようになったのだ(詳しくはこのコラムを参照)。
岡崎が試合で出すべきなのは自らの長所。前線からの守備、運動量、裏に抜ける動きなども岡崎の長所だが、一番発揮すべきなのはゴールを決める能力だ。
チームのために自分を殺す必要はない。ゴールを決めれば、それはチームのためになる、と考えて岡崎はバイエルンとの一戦に臨んでいたのだ。
だから、試合後に岡崎は悔しさを隠さなかった。
「本当に悔しいし。2-3まで行けたけど、(世の中の認識は)結局はバイエルンが優勝したんだな、ってなるし。勝たなきゃいけない試合だった」
ただ、その一方でこう続けた。
「この1年は……別に何かから逃げてたわけじゃないけど、『結果がすべてじゃない!』と思っていろんなことにチャレンジしてきましたからね。例えば攻撃のリズムを作るとか。けど、そんなのは普通にやらないといけないこと。結局、このヨーロッパで何をやっていかないといけないか、あるいは自分が何でここまで来れているかと言ったら、献身性だけじゃなくて、点をとれるとか、裏抜ける時にパワーがあるとか、そういう部分だと思うので。そこをいかに試合で出せるのかとかっていうところで違いを出していかないといけないのかなって思っていて、それは出たのかな……」
シュツットガルトに来てからは、裏に抜ける動きを愚直に繰り返すチームメイトとのバランスを考えて中盤に下がって攻撃の組み立てをしたり、チームの攻守のバランスを考えて攻撃的なポジションで起用されながらも守備に意識を傾けていたこともある。
でも、そうしたプレーはいったん封印して、ゴールを決めることや、裏へ抜けることを意識していけば、それがCL王者であってもある程度は通用するということがわかったのだ。
もっとも、1試合だけ良いプレーをするならば、「たまたま調子が良かった」の一言で切り捨てられる。この日、見せたようなプレーを続けていくことが岡崎には求められている。それが出来れば、自然とゴールも増えていくだろう。
コンフェデでは、ゴールを獲るようなプレーをやらなきゃいけない。
来るべきコンフェデレーションズカップに向けて、鼻息も荒い。
「自分にとってコンフェデは本当にチャンスだと思っている。じゃあ、どこをアピールするかって言ったら、自分のいいところだと思うから」
シュツットガルトは来シーズンにむけて前線の選手の補強に動いており、このままでは岡崎の出番が減る可能性もある。
W杯アジア予選と違って、世界の強豪たるブラジルやイタリアが出場するコンフェデレーションズカップで活躍さえすれば、他のクラブから声がかかる期待も持てる。残留したとしても、日本代表でのパフォーマンスをつぶさに観察しているボビッチSDやラバディア監督からの評価そのものが高まるかもしれない。そして、クラブでレギュラーということになれば、岡崎の活躍そのものが日本代表の成長にも繋がってくる。
そして何より、岡崎は自分の考えは正しかったのだという自信を深めることが出来る。