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日本代表監督のポストは人気が無い?
原博実の信念と監督が決まらぬ理由。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKYODO
posted2010/08/26 10:30
記者会見では報道陣にその監督決定の遅延の理由と責任を巡って厳しく問われた原博実委員長。しかし、一切の妥協無く監督交渉を進めている点をこそ高く評価したい
新監督選びが難航している。
欧州で監督候補と交渉にあたっていた日本サッカー協会の原博実技術委員長が帰国し、交渉状況の報告を行なった。すべての条件提示を済ませて返事待ちの候補者や条件提示の準備に入っている候補者など複数と交渉していることを明かしたが、その一方で「9月中旬には来てもらえれば」と先延ばしになる可能性を示している。現在返事待ちの候補者がオファーを引き受けてくれる確証を得ているのならば、おそらくこのようなコメントは出てこない。その候補者の名前は「交渉中のため」と伏せられたが、感触としてはまだ五分五分といったところだろうか。
9月4日のパラグアイ戦、7日のグアテマラ戦は原が代行監督を務めることも決まった。ワールドカップ出場国で次期監督が決まっていないのは日本と北朝鮮のみ(アルゼンチンは暫定監督)。この1カ月間、極秘裏に動いていた原委員長がようやく公の場で口を開くことに期待を抱いていたメディアからは、当然ながらこれまでの交渉の不手際や責任を追及するような厳しい質問が飛んだ。また、新監督の決まらない状況で親善試合を行なうことに、選手を派遣するJリーグのクラブからも疑問の声が上がり始めている。
妥協して「連れてきやすい人ということにはしない」
喫緊に試合が迫っている以上、監督の決定が遅れていることは担当責任者の原委員長が責められて然るべきだ。ただ、この日の会見では監督選考にあたっての原の信念を強く感じることもできた。
「日本がW杯でベスト8、ベスト4ともうワンランク上に行くためには、選手がもう1つ上のレベルに行くこと、そして指導者でいえば、海外で代表監督の経験や実績、またはJよりも高いレベルで欧州や南米のクラブで指導実績があり、かつCLやリベルタドーレスでの経験のある監督さんが必要。連れてきやすい人ということにはしないで、人間的にも素晴らしく、日本を任せたいと思える人を僕は日本に連れてきたい。世界の真っただ中で戦っている人というか、世界のマーケットで取り合いになっているところからまずあたってみようと思った。簡単ではないチャレンジだが、粘り強くやっていきたい」
今回の選考で最も大事にしなければならないのは、日本が次のブラジルW杯に向けてどういうサッカーをしていくか、その方向に沿った人を選ぶということだ。原はこの点でも、方針を明確にしている。
「攻撃に移ったときにすぐボールを下げるのではなくて、スペインのように奪った瞬間に前に入っていくようなサッカー。(相手陣営の)残り3分の1に入ったときに人を追い越すとかリスクを背負って突破に入っていく。そういうサッカーを志向している監督がいい」
攻撃的なサッカーを信条とし、世界の舞台で活躍する監督。プラスして日本に合うかという視点で、原は候補者を選んできた。
原はこの席上、「攻撃サッカーを信条」とする2人と交渉して失敗に終わったことも告白している。