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屈辱の昨季から何が変わったのか?
歴代最強バイエルン、CL制覇の確信。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/05/23 11:50
CL決勝を控え、公式記者会見に臨んだバイエルンのラーム(左)とシュバインシュタイガー。ラームは「代表チームやブンデスリーガを含め、ドイツサッカーはこれから数年間、欧州で最も注目されることになるだろう」と語った。
「僕たちは素晴らしいシーズンを過ごしている。だから、持っている実力を出せればドルトムントを倒すのには十分だと思うよ」
キャプテンのフィリップ・ラームは、静かに、しかし淡々と自信をにじませる。
それもそのはずだ。バイエルンは、今季のブンデスリーガで最多勝利、最多勝ち点、最多無失点試合、最長連勝など主だった新記録だけでも12個も記録した。ブンデスリーガ50年の歴史で文字通り最強のチームとなったのだ。
チャンピオンズリーグ(CL)決勝進出は最近4年間で3回目となるが、過去2回の決勝でもプレーしているキャプテンは、その違いをこう強調する。
「2010年のときには運もあったし、僕らは優勝候補というわけではなかった。2012年のときは自信を持って決勝に進んだし、決勝戦でも良い戦いを見せたのに、最後の最後で敗れてしまった。ただ、そうした経験があったから、チームは成熟したんだよ」
「2009年からの僕らの成長はものすごくポジティブなものだよ」
だが成熟したのは、ピッチ上の苦い経験からだけではない。
実は、ファンハールが監督に就任した直後の2009年秋、ラームはクラブ批判を行ない、5万ユーロ(当時のレートで約510万円)もの罰金を受けている。クラブの方針には哲学がなく、選手補強も十分ではないというのが彼の主張だった。
ラームは自らの苦い経験については語りたがらないが、当時からの変化については雄弁だ。
「2009年からの僕らの成長はものすごくポジティブなものだよ。僕らはターゲットを絞った補強をしているし、戦い方にも哲学があるんだ」
彼らの哲学とは、自らボールを支配して、相手ゴールを目指すということだ。『ヴェルト』紙もラームと同じように、ファンハールが持ち込んだ哲学について指摘する。
「ファンハールがボールを保持してゲームを支配する戦いを築きあげた。そして、その戦い方をハインケスがさらに発展させたのだ」