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柏、日本勢2年ぶりのACLベスト8!
全北現代戦で見せた2つの強みとは?
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO SPORT
posted2013/05/23 12:35
試合後、ゴール裏でサポーターへの感謝を伝えていたレイソル・イレブン。3点目を決めたエース工藤(右端)には、23日の代表メンバー発表にも期待がかかる。
複数のシステムを状況に応じて使い分け、敵を翻弄する。
先制点を喫した後に行ったシステム変更について、試合後の記者会見でネルシーニョはこう説明している。
「今日のゲームで使った2つのシステムを、選手たちは完璧にマスターしている。ゲームは生きもの。必要に応じて、用意していた2つ目のシステムを適用したということ」
複数のシステムや戦術を状況に応じて使い分け、その変化に違和感なく対応することができる。それが、ネルシーニョの就任以来、システムやメンバーに細かい変化を加えながらチームを強化してきた柏にとっての大きなストロングポイントと言えるだろう。
特に相手にとって“対柏”のスカウティングが十分でないACLの舞台では、ピッチ内におけるそうした強みが存分に発揮されている印象がある。
一般的に、そうした状況で生きるのは強烈な“個”だが、この日の柏はレアンドロ・ドミンゲスを欠いてもチーム力で十分に戦えていた。
それからもう一つ。今の柏を支えるメンタル面での大きな強みを表す言葉が、「想定内」というキーワードである。
Jリーグでの、とある試合のハーフタイム。2-0のリードで前半を折り返した選手たちは、ロッカールームで口々に「2-0は危険だから気を引き締めろ」と言い合って、固い雰囲気になっていた。それを聞いたネルシーニョのひとことが、何とも彼らしい。
「なぜ2点もリードしているチームが相手を恐れる必要があるんだ。何も恐れずにそのまま戦えばいい。勝っているのは我々なのだから」
指揮官のそうした言葉によって徐々に“勝者のメンタリティー”が構築されていった結果、選手たちは試合の展開に応じて何をどうすればいいかの判断をピッチ内で下せるようになっていったのだ。
この日のゲーム自体が、第1戦を2-0で迎えた後のいわば“後半戦”。だから1点を返されても、「想定内」として焦ることなく、チームの共通認識を保ったまま勝利を手繰り寄せることができたのである。
日本を代表するにふさわしい戦い方でアジアで戦い続ける柏。
試合後の取材エリアは、日本勢として久々の8強進出に沸いており、多くの取材陣でごった返していた。
そんな中、90分を通じて相手のエース、イ・ドングッとマッチアップし続けた近藤が、混雑する通路をすり抜けるように取材エリアを通り過ぎていった。
その表情に浮かぶ充実感からは、1年前の悔しさがほんの少しだけ晴れたのではないかと察することができた。イ・ドングッと交換したユニフォームは、近藤にとってこの夜に手にした勝利の証である。
スタジアムの外では、サポーターの集団から「今日はいい国歌が歌えた」という声が聴こえてきた。
紛れもなく、今の柏は日本代表としてアジアの舞台で戦っている。