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柏、日本勢2年ぶりのACLベスト8!
全北現代戦で見せた2つの強みとは?
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO SPORT
posted2013/05/23 12:35
試合後、ゴール裏でサポーターへの感謝を伝えていたレイソル・イレブン。3点目を決めたエース工藤(右端)には、23日の代表メンバー発表にも期待がかかる。
先制点の全北現代が、一気に攻勢にかかるも「想定内」。
5月22日、迎えたホームでの第2戦。
指揮官のネルシーニョが「スピリットが足りなかった」と振り返る前半の立ち上がりは、ピッチに立つ11人の足取りが明らかに重かった。もっとも、それは相手も同様で、意外にも最初の10分間が静かに流れたことは柏にとって幸いだった。振り返って、最も怖かったのは、この時間帯に失点を喫してリズムを失うことだったように思う。
全北現代が勢いづいたのは、12分のプレーだった。
増嶋が自陣深くから放ったロングスローをMFクォン・ギョンウォンがカットすると、そのままドリブルで持ち込んでミドルシュート。これが右ポストに弾かれると、舞台は一気にヒートアップする。
直後の13分には右から左へとパスをつながれ、最後はエニーニョがシュート。さらに中央から崩され、MFパク・ヒドが決定機を迎えるがこれはDF鈴木大輔の見事なカバーリングで失点を阻止した。
柏は1トップのクレオが懸命のチェイシングを見せたが、背後の選手との距離感が遠く効果的に作用しない。全北現代はそうして生まれたギャップにパスをつなぎ、さらに縦への放り込みで変化を加えて徐々にリズムを掴んでいった。そうして手にした勢いの末に生まれたのが、21分の先制弾なのである。
この失点について、キャプテンの大谷秀和は試合後にこう振り返った。
「あくまで想定内。焦る必要もなかったし、あの失点でメンタル的に追い込まれるようなことはなかった」
指揮官にとっても「想定内」だったのだろう。
タッチライン際に歩み寄ったネルシーニョはシステムの変更を指示し、それまで右サイドに位置していた工藤がクレオと並び2トップの一角を担う。4-2-3-1から4-4-2へのシステム変更は、結果的にはこの試合の流れを左右する決定打となった。
システム変更後、明らかに戦局が変わった!
最前線にもう一つの“預けどころ”を得た柏だが、その2つのポイントをフェイクとして右の茨田陽生、左のジョルジ・ワグネルにボールを集め始める。2トップの圧力に対応する形でやや最終ラインを下げた全北現代は、ワイドに開く茨田とワグネルを捕まえきれず、中盤のパスワークで後手に回ってズルズルと後退。30分にはカウンターから茨田が持ち前のセンスを発揮するラストパスを送り、これを受けた工藤がシュート。惜しくもGKのファインセーブに阻まれたものの、茨田とジョルジ・ワグネルが存在感を増すにつれて試合の流れは柏へと傾き始めた。
DF渡部博文の同点弾が生まれたのは41分。
これで、2試合合計スコアは3-1。それでも追いすがろうとする全北現代は前半の残り4分間で猛攻を仕掛けたが、柏はチーム全体の集中力でこの時間を乗り切り、後半の危なげない試合運びにつなげた。51分のジョルジ・ワグネルのゴールは勝利の決定打となり、69分の工藤のゴールは相手の戦意を喪失させるトドメの一撃となった。