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バルサ時代は本当に終わるのか?
ビラノバ改革の副作用がついに露見。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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posted2013/04/29 08:01

バルサ時代は本当に終わるのか?ビラノバ改革の副作用がついに露見。<Number Web> photograph by Getty Images

来季の監督続投もすでに決まっているビラノバ。バイエルンの次期監督が決まっている前上司のグアルディオラと対戦する頃まで、バルサの強さを維持できるか?

ビラノバ改革は攻撃においては成功したが……。

 昨季までの4シーズン、バルサはポジショニングに重きを置き、パスを横に繋ぎながらゆっくり敵陣に攻め入っていた。全員が一定の距離を保ったまま前進するには、時間をかける必要があったからだ。

 これに対し、今季のチームは前へ前へとボールを動かしてきた。敵が守備を固める前にシュートまで持って行けるように。

 結果、今シーズン前半戦のバルサはここ5年で最多の64得点と勝ち点55を記録した。後半戦に入ってからは多少ペースを落としたが、それでも第32節終了時で得点は昨季より5、勝ち点は6も多い。ビラノバ改革は、目的であった攻撃の改善においては、一応成功したといえる。

 ところが大きな副作用もあった。

 まずは失点の増加。攻め急ぐせいで選手間の距離が開き、ボールを失ってもすぐにプレスをかけることができなくなったことが最大の原因だ。昨季は38節終了時で29しかなかった失点が、今季は前半戦の19節だけで20に達している。

 それから選手の肉体的負担の質的変化。

 誤算の元凶はおそらくこれである。

今季のバルサは短いダッシュではなく、より長く走る戦術へ変化した。

 以前のバルサは常にコンパクトであったため、選手にとって「走る」といえば、味方がボールを失った瞬間にスタートする数mのダッシュのことだった。練習もそれに応じて行われ、瞬発力が強化された。しかしコンパクトさを放棄した今季は、ボールを追ってこれまでよりずっと長い距離を走ることが増えている。瞬発力よりタフな脚が必要となっている。

 問題はこの変化に選手の身体が対応しきれておらず、以前とは別種の疲労を溜め込んでしまっていることだ。ここ数カ月、アルバやアドリアーノ、マスチェラーノが次々に負傷したのは、彼らが誰よりも長く、またコンスタントに走らされるポジションに就いていることと無関係ではなかろう。

 ところで、チームに近い人物によると、ビラノバはリーガ王座の奪還を強く望んでいたらしい。昨季はマドリーの後塵を拝したが、その前に3連覇を成し遂げたバルサのサッカーはいまも有効であることを示すためだという。

 この思いも、いまとなってみれば、シーズン終盤前のコンディション調整を妨げたといえる。

【次ページ】 ビラノバとロウラはローテーションを活用しなかった。

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