MLB東奔西走BACK NUMBER
カブスの守護神になった藤川球児。
成功の鍵を握る高めのストレート。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/04/13 08:00
4月9日、シカゴでのブルワーズ戦にクローザーとして登板した藤川球児。9回の1イニングを1安打2三振の無失点で抑え、今季2セーブ目をマークした。
開幕からわずか1週間しか経ってない4月7日、カブスのデール・スウェイム監督は中継ぎ投手の配置換えを決定し、藤川球児投手をクローザーに指名した。
「こんな状況も考えて我々は彼と契約した。彼は最後の3アウトを奪う状況で投げることに慣れている。思案を巡らしたというより論理的に決定したことだ」
監督が説明するように、本来のクローザーであるカルロス・マーマル投手が深刻な不振のため、彼に代わるクローザーとして日本での実績が評価された、藤川が指名されたものだ。
どんなかたちであれ、中継ぎ投手の花形ともいえるクローザーを移籍1年目から務めることになったことは、藤川にとっては大きな意味を持つ。本人も日本のメディアに対してさらなる意気込みを口にしている。
「正直やってやるぞという気持ち。やりやすい。後ろに自分しかいない。点差を守りきることに執着できる」
そんな藤川だが、クローザーに指名された前日の4月6日、ブレーブス戦でメジャー3度目の登板を果たし、先頭打者から3連打を含む1回4安打3失点と打ち込まれ、結果を残すことができなかった。
だからといって、藤川がメジャーでクローザーを務めることに疑問を抱いているのではない。この段階では逆に、首脳陣や捕手達が、藤川の持つ本来のポテンシャルをまだ完全に理解していないのではないかと感じていたからだ。
典型的なメジャー・スタイルは藤川を活かすのか殺すのか。
ブレーブス戦を含めここまでの藤川の配球は、まさに典型的なメジャー・スタイルを踏襲していた。
打者のヒザ付近に投げ込んでストライクを奪い、そこからボールを横や下に動かしてボール球を打たせてとるというものだ。ブレーブス戦でも先頭のジャスティン・アップトン選手を0-2と追い込んでから、捕手はフォークを連投させて失敗している(結果的にフォークが決まらずその後のカーブを痛打されている)。それ以降も打たれた安打はすべて真っ直ぐなのだが、ヒザ付近より少し高めという甘いコースだった。
すでにメジャーの中継ぎ陣、特にクローザーなどは時速100マイル前後の速球を投げるのが当たり前になっているこの時代で、94マイル前後の藤川が同じメジャー・スタイルの投球で勝負するのは限界があるだろう。
彼の投球を生かすためには、藤川が日本で成功してきた最高の投球を引き出すしかない。そう、日本のファンなら誰でも知っている、高めに伸び上がる魔球ともいえる真っ直ぐだ。