プレミアリーグの時間BACK NUMBER
プレミア後半戦で監督交代ラッシュ。
危険な賭けが残留争いに及ぼす影響。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2013/04/10 10:30
サンダーランドのシャツを手に、新監督就任会見に臨んだディカーニオ。現役時代はウェストハムなどプレミアで7年間プレーしている。
3月末のプレミアリーグ第31節後、サンダーランドでマーティン・オニール監督が解雇された。
新年に入ってからの「犠牲者」としては3人目だ。同日の試合で敗れた相手は、リーグ優勝が確実視されている、格上のマンチェスター・ユナイテッド。結果は僅差の0対1。16位に順位を下げたが、勝ち点と共に重要な得失点差では、17位以下の4チームを10点以上引き離しており、絶望的な状況ではなかった。
加えて、プレミアでも10年近い監督歴を持つオニールは、サンダーランドを降格の危機から救った経験の持ち主でもあった。2011年12月に16位で引き継いだチームを、13位に押し上げて就任1シーズン目を終えているのだ。少年時代にサンダーランド・サポーターだった指揮官は、ファンの支持も根強かった。こうした状況を鑑みれば、残り7試合での監督交代が、経営陣の「パニック」と非難されるのは当然だろう。
補強予算をしぶるサンダーランドの米国人オーナー。
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更には、クラブ経営陣が「金」に固執して焦りを覚えたと見られる点が、オニール解雇への批判を強めた。
米国人オーナーは、しぶしぶ、40億円弱の今季補強予算を用意したと言われる。移籍金約17億円で最高値のスティーブン・フレッチャーは、リーグ戦での得点を二桁台に乗せたが、約14億円のアダム・ジョンソンは、28試合で4ゴール8アシストと期待外れ。今冬に獲得したダニー・グレアムは、ジョンソンの半額だが、0ゴール、1アシストで移籍後の2カ月間を終えた。
戦力不足を公言していたオニールは、この夏も補強予算増を求めるつもりだったに違いない。費用対効果に疑問を抱いていたオーナーは、残留実現で解任が難しくなる前に、降格の危機を理由に監督の首を挿げ替えるタイミングを計っていたのではないか? その証拠に、解任翌日には、暫定ではなく、正監督としてパオロ・ディカーニオ就任が発表された。
また、5年前に、投資目的で3割の株式保有からクラブに関与し始めたオーナーにすれば、来季から新契約下の条件が適用されるプレミア放映権収入を逃したくない気持ちは強いはずだ。契約更新の度に高騰を続ける放映権料は、リーグ最下位でも最低6000万ポンド(約90億円)の“TVマネー”を手にするレベルに達するのだから。