フットボール“新語録”BACK NUMBER
ロシアU-18代表デビューを果たした、
日本人高校生・篠塚一平の成長曲線。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byShinya Kizaki
posted2013/04/05 10:30
スパルタク・モスクワのリザーブチームに所属し、ロシアU-18代表デビューも果たした篠塚一平(右)。隣はスパルタクでも代表でもチームメイトのデニス・ダビドフ。
「ロスタイムを含めてわずか6分間のプレーで、ほとんど覚えてない。 ただ、ロシア代表のユニフォームを着てピッチに立てたことは やっぱり嬉しかったです」
篠塚一平(ロシアU-18代表)
ロシアU-18代表対ウクライナU-18代表の87分、ついにその瞬間が訪れた。
1月11日、篠塚一平はボランチとしてピッチに立ち、ロシアU-18代表のデビューを果たした。サンクトペテルブルクで開催された親善大会『バレンティン・グラナトキン・メモリアル』でのことだ。
「メチャクチャ緊張しました」
篠塚は少し照れながら振り返った。
「すぐにスローインからボールを受ける場面があったんですが、緊張していたからとんでもない方向にパスしてしまった。ロスタイムを含めてわずか6分間のプレーで、ほとんど覚えてない。この大会中、出番はこのウクライナ戦だけしかなく、悔しい思いもしました。ただ、ロシア代表のユニフォームを着てピッチに立てたことはやっぱり嬉しかったです」
2011年3月にロシアに移住してから2年弱――。千葉県の中央学院高校でレギュラーになれなかった高校生は、想像もしていなかったステージに立っていた。
「まだロシア国歌を覚えてなかったので、コーチから『次に来るまでに覚えてこいよ』と言われました(笑)。もう歌えるようになりましたよ」
「常識が異なるロシア」で何度も起こった“予想外の出来事”。
ただし、サッカーにおいても事務手続きにおいても常識が異なるロシアだけに、ここまで来るには“予想外の出来事”が何度も起こった。
まずは2012年夏、育成を得意とするチェルターノバから、スパルタク・モスクワのリザーブチームに移籍してしばらく経ったときのことだ。クラブから「代表に選ばれるかもしれないぞ」と言われながら、書類が間に合わなかったために選出は実現しなかった。
そして同年12月、今度は二転三転する情報に振り回される。
ロシアU-18代表に選ばれたとクラブから連絡があり、代表のドクターの下でメディカルチェックも行なわれた。しかし、いざ合宿が始まると、篠塚はバックアップメンバーだったことが判明する。年末に日本に帰国することを犠牲にして大会に臨むつもりだっただけに、ショックは大きかった。
だが、ここからさらなるサプライズが待っていた。