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阪神の生え抜き助っ人、マートン。
活躍の秘密は“心意気”にあり。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/07/14 13:20

阪神の生え抜き助っ人、マートン。活躍の秘密は“心意気”にあり。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

マートンの人間性を物語る、あるファンとのエピソード。

 そして3つめ。これは、野球選手としては最も重要なこと、人間性だ。

「メジャー経験者」というプライドの壁を自ら取っ払い、首脳陣の意見を素直に受け入れ実践する。全く打てずにフラストレーションが溜まるゲームでも、凡打して意気消沈する選手に対して「グッドスイング!」と声をかける。ポジティブな姿勢があるからこそ、チームも最後まで高いモチベーションを保つことができる。

 そのような姿を知るファンも、彼を「虎戦士」として認め、愛するようになった。

 ある日の試合前の練習中、バックネット裏に背番号9のユニフォームを掲げたファンが、近くにマートンがいることを確認すると、「ミスター・マートン!」と声を張り上げる。彼は笑顔で手を上げ、ベンチへと姿を消した。

 と、これだけでも微笑ましい光景ではあるが、なんとマートンはすぐにベンチから顔を出し、そのファンの元へ歩み寄っていく。手を上げる仕草は「ありがとう」ではなく、「ちょっと待ってて」の合図だった。サインペンを取りにいっていたのだ。興奮したファンは、ありがとうございます、頑張ってくださいと、早口で感謝の意を述べている。それに対し彼は、申し訳なさそうにこう返す。「ゴメンネ、マダ、ニホンゴガヨクワカラナインダ。ありがとう!」。

「ありがとう」だけ日本語で答えたマートン(カタカナの部分は英語)。サインも適当にではなく、自分の手元でしっかりと書いた。日本語を話せなくとも相手の目を見て会話し、握手をする。今できる最大限のコミュニケーションを図ろうと常に努力しているのだ。

久々に現れた強力な生え抜き外国人に寄せられる期待。

「どのグラウンドでも甲子園だという気持ちでプレーしている」と、マートンは話していたことがある。彼にとってはどの球場もホーム。そこに来てくれたファンのために全力でプレーする。前述した要素に加え、その心意気があるからこそ今の数字に結びついているのだろう。

 個人成績については、度々「まだシーズンの途中だから」と明言を避けるマートンだが、久々に現れた強力な生え抜き外国人選手だからこそタイトルを獲ってほしい。ファンからすれば、その思いは日に日に増してくるのも無理はない。

 チームとしては、13日からの巨人との首位攻防戦で勝ち越せば首位に躍り出る。そのためにマートンの打棒は不可欠となってくるだろうが、もし、首位になったことで上昇気流に乗り優勝、となれば、神を信じる男は、「神様、仏様、マートン様」と崇められるかもしれない。

 いや、でもそれは、本人が言うように、「シーズン途中だから」まだ気が早いか……。

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