痛快☆ブブゼラ通りBACK NUMBER
ドイツのタコより凄い占い師登場。
南アW杯優勝国はオランダである!
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byTakashi Kumazaki
posted2010/07/11 12:40
南アW杯の決勝戦を最強呪術師に占ってもらうことに。
こうした呪術はアフリカでは「ジュジュ」、「ムーティ」などと呼ばれ、南アフリカでは「サンゴマ」とも呼ばれる。
サンゴマは当然、南アフリカのサッカーと強く結びついており、優れたサンゴマ(呪術師、祈祷師)を専属に持つことが、強いチームの条件とさえいわれる。
優れたサンゴマは当然、敵のエースを不調に陥れることができる。またサンゴマに呪われたキーパーは幻覚症状に陥り、飛んできたボールが壺に見えるのだという。怯えて、シュートから逃げてしまうのだ。恐るべし、サンゴマ。
決勝戦までの束の間のオフを利用して、筆者はタクシー運転手のブルースに連れられて、とあるサンゴマを尋ねた。
薄闇に包まれた物騒極まりないダウンタウンの一角、ちっぽけな商店の錆びついたドアを開けると、独特の匂いが鼻をついた。ハーブや香辛料を売る店だった。窓につるされた鳥の剥製が、怪しい空気を醸し出している。
この店の女主人エリザベスが、この界隈で名高いサンゴマだった。
「スペインかオランダ、どちらが世界一になるか占って下さい」
エリザベスはかつて原因不明の病に長く悩まされ、そのとき心を決めた。自分がサンゴマになって、病を治すしかない。彼女はサンゴマ養成塾(ブルースもそんなものがあるとは知らなかった)に通い、サンゴマの能力を習得した。病は治り、いまでは週に5、6人の客を取っている。家庭や仕事の悩み、病気などの相談が一般的なのだという。
そのエリザベスに、「スペインかオランダ、どちらが世界一になるか占って下さい」とお願いすると、店の奥に案内された。
まず、50ランド(600円)のお布施を差し出す。彼女は厳かにキャンドルに火を灯し、何かが入った袋を両手で揉むようにしながら、何事か唱え始めた。ブルースによると、ズールー語で「教えて下さい、教えて下さい、どちらが勝てますでしょうか」などとつぶやいていたそうだ。
やがて、エリザベスは袋の中身を一気に床にあけた。貝殻や骨が散らばる。その散らばり具合が、勝者を物語っているのだ。