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“華麗”と“効率”のせめぎ合い。
バルサ・サッカー同士のW杯決勝戦?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2010/07/11 11:25
「バルサの選手を中心に作った」チームと、「バルサの哲学を参考にして作った」チームの対決――。2010年南アフリカW杯の決勝、スペイン対オランダを一言で表せば、そうなるだろう。
今のスペイン代表は、バルセロナの選手抜きには成り立たない。
デルボスケ監督が選んだドイツとの準決勝の先発メンバーには、プジョル、ピケ、ブスケッツ、シャビ、イニエスタ、ペドロと、6人もの「メイド・イン・バルサ」が名を連ねた。特にシャビとイニエスタがキーマンで、彼らが密集地帯で絶妙のポジションを取るからこそ、バルセロナと同じようなパスまわしが可能になっている。
一方、ファンマルバイク監督率いるオランダ代表は、この2年間、ずっとバルセロナを意識してチーム作りを進めてきた。理由は単純明快。この指揮官がバルサ流サッカーに惚れ込んでいるからだ。
ファンマルバイク監督は言う。
「私たちが目指しているのは、まさにバルセロナのようなサッカーだ。彼らは時計のように正確に動き、相手の守備の穴を見つけることができる。今、最も勝率を高められるやり方だと思う」
オランダはサイド攻撃にバルサ流パスサッカーを加えた。
これまでオランダは、突破力のあるウイングにパスを出し、そこから相手の守備を切り崩すという「サイド攻撃」を武器にしてきた。だが、ここ数年、サッカー界では守備戦術が急速に発達し、サイド攻撃だけでは通用しなくなった。
そこでファンマルバイク監督は、中央の密集地帯にあえて飛び込み、ショートパスをつなぐバルサ流の攻撃を選手たちに身につけさせようと考えたのだ。動いている選手の足元から足元へ、ピンポイントでパスをつなぐサッカーである。まだ改善すべき点は多いが、トップ下のスナイデルを中心に、中央からもペナルティエリアに侵入できるようになってきた。
では、「バルサの母国」と「バルサを目指す国」が対戦したら、いったい勝つのはどちらだろうか?
ブックメイカー『bwin』のオッズでは、スペイン2倍、引き分け3.35倍、オランダ3.50倍となっており、「バルサの母国」が有利と見られている。
スペインは準決勝でドイツ相手に失点をゼロに抑えたのに対し、オランダは準決勝のウルグアイ戦で2失点もしてしまった。守備の安定度という意味ではスペインが上。『bwin』のオッズは妥当だろう。
しかし、オランダにもチャンスはある。