南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
クライフがスペイン応援を決定!?
美しく、偉大な決勝戦は実現するか。
text by
西部謙司Kenji Nishibe
photograph byGetty Images
posted2010/07/10 11:00
優勝を意識してしまう決勝戦に面白い試合は少ない。
しかし、古くからのサッカーファンにすれば、スペインとオランダという似たもの同士の決勝に期待したいのは、やはり美しいフットボールなのだ。なぜなら、この両国代表以外でそれを期待するのはもはや無理かもしれないからだ。
W杯の決勝は面白くない試合が多い。互いに優勝を意識して固くなり、守り合いのような展開になりがちだからだ。
前回のイタリアvs.フランスなどは、両方とも守備型で典型的な守り合いの末に延長、PK戦での決着で終わっている。
W杯はいくつもの名勝負を生み出してきたが、美しいゲームはたいがい片方のチームの偉大さだけが際立って終わるものなのだ。1970年の決勝(ブラジル 4-1 イタリア)は美しいファイナルだったが、美しかったのはブラジルだけだ。それ以後、接戦はあっても美しく偉大なファイナルはなかったと思う。
決勝以前ならば、美しいゲームは少なくない。
'86年の準々決勝、フランスvs.ブラジルは双方が美しいゲームだった。どちらが攻撃しても素晴らしく、美しいプレー、偉大なフットボールの時間が継続して流れていた。すぐに廃刊になってしまったが、フランスには『グァダラハラ』という名のフットボール誌があった。“グァダラハラ”とは、ブラジルと戦ったメキシコの都市名だ。フランスのファンにとって、グァダラハラはそれほどまでに甘美な思い出の場所ということなのだ。
誰が見ても面白い、解説不要の試合になって欲しい!
スペインとオランダは、美しくプレーする哲学を持っている。
この2チームの対戦だけが、双方ともに美しい偉大なファイナルを実現する可能性を秘めている。
イビチャ・オシム前日本代表監督が、「モウリーニョの影響が強い大会」と皮肉なコメントをしているように、今回はいわばプロ仕様の試合が多い。コーチや専門家にとっては見どころが多いかもしれないが、一般の人々には退屈だったかもしれない。誰が見ても面白い、解説不要の試合、そういう試合がW杯にはもっと必要ではないだろうか。その点、スペインvs.オランダは最も期待ができるカードだ。
フットボールは勝敗がすべてではないと思う。勝つためだけにやるには、けっこう頼りないスポーツなのだ。強いほうが負けることもけっこうある。プレーすること自体に楽しさがあるから、世界中の人々がこのスポーツにハマるのだろう。スペインとオランダはプレーする楽しさ、フットボールをプレーする理由をはっきり自覚し、決して手放そうとしない。どちらも勝てば初優勝なので固くなってしまうかもしれないが、ぜひ子供のようにプレーしてほしい。それは最高のフットボールのサンプル、宣伝になるはずだ。