野ボール横丁BACK NUMBER
“役割分担”が決まった侍ジャパン。
「組織力」は「個の力」を上回るか?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/03/17 08:02
田中の突然の不調から、マウンドに集まったナインと東尾投手総合コーチ。2次ラウンドのオランダ戦では復調の気配を見せ、決勝での先発も予想されている。
3イニングス目に入ってからの田中将大は明らかにおかしかった。
3月8日の2次ラウンドの初戦、台湾戦でのことだ。田中は今大会、2度目となるリリーフとして登場した。6回からマウンドに登り、最初の2イニングスは完璧に抑える。ところが2-2の同点に追いついた8回、突然制球を乱し、無死から3連打を浴びた。2-3と勝ち越しを許し、そのまま降板。
6、7回の田中と、8回の田中は、まるで別人だった。投げるボールも、表情も。おそらくリリーフとして3回投げることは想定していなかったのではないか。
試合後、田中はこう振り返った。
「(事前の投球練習は)前の攻撃のときに投げたぐらい。ドタバタしていた。でも、そういう状況の中でも投げるのがリリーフの役割なので」
采配を擁護しつつも、困惑振りが伝わってくるコメントだった。
また、10回に抑えとして登板した杉内俊哉はこう話している。
「5回ぐらいから行くかもしれないと言われていたので、2回ぐらいから肩をつくっていた。全部で3回ぐらい(肩は)つくった」
これも通常ではありえない。おそらく、予想以上に台湾に苦戦したため、中盤から、杉内ではなく、エース格の田中を使わざるをえなくなったのだろう。言ってみれば、「その場しのぎ」の継投だった。
台湾戦の死闘を経て、侍ジャパンは「ひとつ」になった。
この時点で、日本はまだ「バラバラ」だった。
だが、台湾戦で延長10回、4時間37分に及んだ死闘を4-3の逆転勝ちで制すると、続くオランダ戦は、ホームラン6本を含む大量16点を挙げ7回コールド勝ちを収めた。
台湾戦の終盤から続くオランダ戦にかけ、日本は、ようやく「ひとつ」になった。言い換えれば、役割分担が決まったのだ。
鳥谷敬と井端弘和の1・2番コンビ。大黒柱は、マエケン(前田健太)。抑えは、牧田和久。主要ポイントがこれだけ決まれば、あとは空いているポストに入るべき人物が自然と収まる。
こうなれば、日本はもう大丈夫なのではないか。なぜなら、自分の役割を見つけた日本人は強いからだ。