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軽妙な文体に知性が滲む、
アスリート実録物の快作。
~村田諒太『101%のプライド』~ 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2013/02/17 08:00

軽妙な文体に知性が滲む、アスリート実録物の快作。~村田諒太『101%のプライド』~<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『101%のプライド』 村田諒太著 幻冬舎 1300円+税

ボクシングの戦略面についても興味深い記述が。

 この本の魅力はボクシングと重なるところがある。ルールの中で殴ることが許されているのは、なんといっても人間に「知性」があることを前提としている。この本は笑いというオブラートに包みながらも、知性が垣間見えてしまうのだ。

 あれ、これって誰かの本と似ているな――と思ったのだが、『爆笑問題の日本原論』に同じような肌触りがあった。

 装丁には自己啓発、ビジネス的な雰囲気が演出されているが、この本は間違いなくアスリートの実録物の快作である。

 ボクシングから離れないのもいい。一般的にアマチュアボクシングは認知度が低いので本人は遠慮しているが、中学時代の憧れのボクサーや、スパーリングしたプロの名前がふんだんに出てくる。

 また、戦略面についての記述も興味深い。現在、世界的な傾向として1ラウンド目はジャッジの採点が厳しく、ある程度打たせてもポイント差がつきにくい、と冷静な視点が披露されている。序盤は打たれても、相手のパンチを見極めていくのが村田の作戦であり、だからこそ後半に逆転が可能なのだ。五輪での金メダルは国際大会での経験、そして世界の潮流を読んだ勝利でもあった。

 最後にアドバイス。この本、電車で読むときは少しばかり気をつけた方がいい。突然、爆笑することがあるだろうから。周りから気味悪く思われても知りません。

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