南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
誰もがしっかりと前を向いていた。
24歳・本田が示した4年後へと続く道。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byREUTERS/AFLO
posted2010/06/30 11:35
'02年のベスト16を大きく上回る成果と4年後への期待。
結局、点が入らないことが敗因となったが、今回の舞台が南アフリカであることを考えると、ベスト16の価値は2002年を大きく上回る。試合終了後のミックスゾーンでは、目を潤ませている選手が少なくなかったが、誰もがしっかりと前を向いていた。
30歳にしてワールドカップ初“出場”の遠藤は、「しびれる試合をいっぱいしたので、またしたいと思っている。こういう大きな大会で、また上にいけたらいい。そういう気持ちを持ち続けると思う」と高いモチベーションを手に入れた。
試合後に流した涙について聞かれると、「このスタッフとメンバー、選手でプレーできてよかった。もう少し続けたかったというのが正直なところです」と、充実した日々を振り返った。
長友佑都は「楽しめたワールドカップでした。自分もチャレンジできたし、トライできたワールドカップだと思います。悔いはない。ただ、僕らがここで流している涙や悔しさは、絶対に次につなげていかないといけない。僕と圭佑で、どんどんサッカー界を引っ張っていこうと誓えた涙だった」と、目に涙をためながらも力強く言った。
次回のW杯で、さらなる高みを目指すと宣言した24歳。
ライバル国が日本の良さについて触れる時、必ず出てくるのが「スピード」と「運動量」である。今大会の対戦国も、いずれも同様のことを挙げていた。だが、実際の戦いでは、4枚のディフェンスと3人の中盤で守備ブロックを作るやり方で成功を勝ち得た。
守備的戦術の是非を吟味する作業もいずれ必要になってくるだろうが、今回の日本が見せた戦いぶりから読み取れるのは、スピードや運動量だけではなく、リトリートした(自陣に引いた)状態での守りからリズムをつかむこともできる懐の深さを身に付けてきたことだ。これこそが、ワールドカップ4大会目にして到達した、新たなフェーズだった。
それを自覚したうえで、本田はさらなる高みを目指すための方向性を唱えた。
「今回の戦いはこういう戦いでしたが、一つの戦い方を示せた上で、もっと欲を出して攻めていく姿勢を、次は世界に見せる時なのではないかと思う。その部分でまだまだ物足りない。もっとギリギリまでやっていかないと」
コンパクトなコメントで、ここまで的確に総括してみせる24歳が日本にはいる。
4年後へ続く道が、目の前にできた。そんなワールドカップだった。