南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
誰もがしっかりと前を向いていた。
24歳・本田が示した4年後へと続く道。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byREUTERS/AFLO
posted2010/06/30 11:35
0-0のまま90分が過ぎ、延長戦に入る直前。試合に出ていない内田篤人、森本貴幸がチームメートの足をほぐし、中村俊輔が岡崎慎司に身振り手振りを交えてパラグアイの特徴をアドバイスする。すでにピッチを退いていた松井大輔が気合いの入った表情で本田圭佑に「頼むぞ!」と声を掛け、本田は力強く頷いた。
一丸となって闘っていた。
それは、紛うことなき真実だった。
結果、パラグアイの前にPK戦で敗退した。
4試合2失点と完璧に近い守備を見せた田中マルクス闘莉王が、センターサークルの上で大の字になる。デンマーク戦でスーパーFK弾を決めた本田はうつむいたまま、スタンドへ向かった。PKを外して泣きじゃくる駒野友一の肩を、涙ボロボロの松井大輔が抱いている。あのクールな遠藤保仁も涙を流していた。
やりつくしたが、勝利に届かなかったという事実がスタジアムに存在した。
前半20分の戦術変更も含め、ほぼプラン通りの試合運び。
それでも、試合の流れはほぼプラン通りだった。
先発は4試合連続不動の11人で、立ち上がりは4-3-2-1。相手のボランチ(背番号20、オルティゴサ)を捕まえ切れず、ピンチを招く場面が何度か出てくるが、すぐに対応した。
日本は前半20分過ぎに4-2-3-1へシステムを変更。ただ、相手の出方に合わせて試合中に中盤をいじるのはデンマーク戦に続いてのことであり、狙いは明確だった。
阿部は言う。
「20番がフリーでロングボールを蹴って、サイドチェンジされたりした。そこに対してなかなか行けない距離だったので、トップ下を置いて後ろを2枚にした。ピッチ内でも話し合ったし、ベンチからも指示はあった」
抜群の対応力を見せる中盤トリオにとって、試合中のシステム変更は織り込み済みのレベルであり、チーム全体にも何ら動揺はなかった。
松井と本田のミドルシュートが敵のゴールを襲う!
相手のプレッシャーをいなし、ときにロングボールでリスクを避ける。ボールポゼッションは6対4で圧倒的にパラグアイに支配されたが、これも事前の予想通りだ。
ピンチの後にはビッグチャンスも作った。
前半20分、バリオスに至近距離から打たれたシュートを、GK川島永嗣がナイスセーブ。その直後の同22分には松井大輔のミドルシュートがバーを直撃した。同40分には本田圭佑が左足でミドルシュートを放ち、相手を脅かした。
後半は停滞したが、後半36分に阿部に代わって中村憲剛が入ると、攻撃が活性化された。川島永嗣も絶体絶命の場面で何度もシュートを止めた。