野球クロスロードBACK NUMBER
不沈艦・巨人を支える阿部と坂本。
先発陣がイマイチでも打線は好調!!
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNaoya Sanuki/Hideki Sugiyama
posted2010/06/28 11:45
ツイスト打法は、実戦でどういう効果があるのか?
では、どのような効果が生み出されるのか?
これについて、ツイストを導入し昨季タイトルを獲得した選手がこんな風に表現してくれた。
「見た目で言えば、明らかに『打ち損じだろ』という打席が少なくなるんですよ。ツイストをある程度ものにできれば、どんな球種、コースにも対応しやすくなると思う」
意表をつかれる外角のスライダーがきても、体が開くことなくしっかりとボールを捉えることができる。阿部の場合、常に左中間への打球を念頭においていることから、これにツイストの要素が加わることによってレフト方向の長打が増える、というわけだ。
これがつまり、現在の阿部の「穴のない打撃」に結びついているのだ。
右方向への打撃を意識しすぎてフォームを崩した坂本。
一方で、現在の坂本は、阿部ほど爆発しているわけではない。
しかし、28日現在でリーグ6位の打率3割2分9厘が象徴するように、1試合で必ず1本は打つ。そう感じさせる安定感が、今の彼にはある。
思えば、シーズン前に右方向を意識した打撃を結果的にものにできなかったことが、今の坂本を形成しているのかもしれない。そのことについて、篠塚和典打撃コーチはこのように話してくれた。
「去年も後半になって打率が急激に落ちたのは、外の球を狙いすぎた挙句、ボール球に手を出してしまうことが多くなっていたから。彼の悪いところは、右方向を意識しすぎると、ボールを追いかけすぎて体が前に出すぎてしまうんです。今年のキャンプでも取り組んでいましたが、結局はフォームを崩してしまったでしょ。
だから本人に言ったんです。『自分のスイングをすれば自然と右方向へ打球は飛ぶようになる。それに、お前の持ち味はショートの頭をライナーで越す打球なんだから、外の球でも引っ張るくらいの気持ちで打ったほうがいい』と」
レギュラー獲得後も不遜にならず素直なままの性格。
ここでもうひとつ、今の安定期を作り出した理由がある。それは素直な性格だ。
若くしてレギュラーとなれば、多少なりとも不遜になるものだ。しかし坂本は、「でも、やっぱり右方向に打たないと成長できない」という杓子定規な考えを持たずに、コーチや監督の意見を実直に受け入れた。