日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
歴代代表監督の“練習公開”から探る、
ザックジャパンの情報戦略とは?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/01/22 10:31
2013年最初の試合、2月6日のラトビア戦では、新戦力の招集も期待される。
できる限り出す、または、なるべく出さない。
代表チームの情報公開というものはなかなか難しい。前者ならば情報を広く出すことによって相手に研究されてしまう怖れもあるが、日本サッカー全体で共有しやすい。後者ならば逆に情報を多く流出しない一方で、共有という点で難しくなってしまう。どっちが良い、悪いというのはないのだが……。
イタリアのビッグクラブの監督を歴任してきたアルベルト・ザッケローニの手法は実にヨーロッパの監督らしく後者のほうだ。練習は8~9割近くがクローズ(非公開、冒頭15分のみオープン)。ただここまで徹底している日本代表監督は、フィリップ・トゥルシエ以来だと言えるのかもしれない。ジーコもイビチャ・オシムも練習はフルオープンにしていたし、前任の岡田武史もクローズのケースも少なくはなかったものの、オープンが基本スタンスだった。
しかしここに来て、ザックジャパンの情報公開にちょっとした変化の兆しを感じている。先日、日本サッカー協会が仙台で開催した指導者対象の「第8回フットボールカンファレンス」においてクローズでの練習の映像が一部初公開され、サイドでの数的優位のつくり方のポイントなどザックジャパンの戦術ポリシーが分かりやすく説明されたというのだ。指揮官の考え方も把握できるとあって、反響も大きかったようである。
チーム状況を完全に公開し、多くの味方を得たオシム。
情報の公開には、メディアまで含めて外部、内部を問わない「完全公開」と選手やチームにかかわってくる者だけに限られた「内部公開」があるように思う。
ジーコやオシムはいわば「完全公開」。練習がフルオープンであるばかりではなく、メディアとも積極的に交流を図ることで自分のやり方やメッセージを広く伝えようとしていた。ジーコもさることながら、オシムもここにこだわっていた。
たとえば“7色のビブス”で練習する目的などをメディアが伝えることによって、その意義は広く知れ渡る。フルオープンの練習にはあちこちから指導者がよく訪れていた記憶が筆者にはあるし、日本サッカー全体がトップである日本代表のサッカーに興味を抱いて、より意識することにもつながっていた。それに、まだ代表に入っていない選手や、合宿に参加していない選手にもオシムのやり方やコンセプトの一端など情報が伝わりやすくなるという効果もあった。オシムには「完全公開」をうまく利用していた印象が筆者にはある。