濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
8時間に及んだ大晦日興行で見えた、
日本格闘技界と“世界”との距離感。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2013/01/17 10:30
『DREAM.18&GLORY 4~大晦日SPECIAL 2012』のGLORY GRAND SLAM HEAVYWEIGHTで初優勝したセミー・シュルト。かつてはセーム・シュルトの名でK-1で活躍し、4度のGP優勝を果たすなど、立ち技ヘビー級王座に君臨している。
“立ち技の本場”欧州の精鋭によるハイレベルな攻防。
このトーナメントにエントリーしたのは、欧州最大の格闘技イベントであるGLORYの常連ファイターがほとんど。つまり欧州屈指の精鋭たちだ。そして言うまでもなく、ヨーロッパはヘビー級キックボクシングの本場である。
サッカーにたとえるなら欧州選手権だろうか。ヨーロッパの強豪国同士による潰し合いが「ワールドカップよりレベルが高い」と言われることもあるように、GLORYトーナメントも“世界中から選手が参加する”広がりよりも“凝縮されたハイレベルな闘い”を見ることができた。ましてヘビー級だから、殴り合いの迫力が伝わりやすい。
“世界仕様”の演出は、日本での人気向上の妨げに!?
だが大会運営には課題もあった。
肝心の採点がビジョンに映るだけでアナウンスされなかったこと。レフェリングのミス(2ノックダウン制なのに、2度目のダウンでもカウントを数える場面が何度かあった)。場内アナウンスも英語ベースで、会場で見ているファンには不親切だった。UFC日本大会なら、英語のアナウンスが“本場直輸入感”の演出にもなるが、GLORYはまだUFCほど日本に定着していない。実際、大会の進行は“世界配信用イベントの撮影”を日本でしているだけのように見えた。
今年も日本大会を3回予定しているというGLORY。今後はDREAMといかに連携し、どう日本に定着するかが重要になる。言い換えるなら、今の日本でいかに“メジャー格闘技イベント”を成立させるかというテーマと向き合う必要があるのだ。
もしGLORYサイドが、日本での大会を“世界中で開催するイベントの一つ”として扱うだけであれば、大晦日という特別なシチュエーションで開催する意味はなくなるのだが……。今回の激闘を見る限り、コアなファンだけの楽しみでとどまってしまうのはあまりにも惜しい。