MLB東奔西走BACK NUMBER
なぜヤンキースがベストなのか?
“環境”から考えるイチローの去就。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/12/01 08:02
現在、神戸市内で自主トレーニングを行なっているイチロー。オフの過ごし方にも注目が集まる。
周囲の“見る目”の変化がイチローを解き放った。
では、イチローの中で、移籍後に野球に対する姿勢や取り組みが変わったかと言えば、それはないはずだ。多少、細かい技術的な修正はあったかもしれないが、これまでと同じことを繰り返してきている。
だが、メディアやファンのイチローを“見る目”が変わり、自分の野球に集中でき、久々に(2001年以来ではなかろうか)心の底から野球を楽しめる環境が確立された。それがいつしかイチローの中にあった何らかの“呪縛”を解き放ったのではないか。
このままイチローがヤンキースと再契約できたならば、シーズン終盤の活躍からメディアやファンの彼に対する期待値は上がることになるだろう。しかし、メジャー随一のスター集団であるヤンキースのチーム特性からいって、これまでマリナーズで受けていたような期待値まで戻ることはなく、あくまで“ピークを過ぎたベテラン選手の1人”という域を超えることはないだろう。
ヤンキースこそが最適の環境である理由。
ヤンキース以外にもイチロー獲得を狙っているチームがあると思われるが、それは移籍後の活躍があったからこそだ。もし、他のチームに移籍することになれば、チームはもちろん、メディアやファンもイチローの復活を疑うことなく相応の活躍を求めるだろうし、それはニューヨークの人々の“見る目”とは違ったものになってくるだろう。
だとすれば、ヤンキース以外のチームが、イチローにとって最適の環境を用意することは難しい。
それを肌で感じているから、イチローもヤンキース残留を表明したのだろう。いずれにせよイチローに思う存分野球に集中できる環境で、1年間プレーしてほしいと考えているのは自分だけではないはずだ。交渉がスムーズに進み、再びイチローがピンストライプに袖を通せるようになるのを祈るばかりだ。