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“悲願のW杯16強”も終着点ではない!
日本フットサル、新たな歴史への挑戦。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKyodo News
posted2012/11/08 12:15
リビアを破り、史上初のW杯ベスト16進出を決めた、「サムライ5」ことフットサル日本代表。三浦知良(11番)の加入で一躍注目を浴びたが、ファンの期待に応え、未知なる高みへと快進撃を続けている。
日本フットサル界の歴史に、新たな足跡が刻まれた。
11月7日に行なわれたリビアとのグループリーグ最終戦は、序盤から日本が主導権を掌握する。ほとんど分刻みと言っていいペースで、シュートを浴びせていく。
開始2分で2失点したポルトガルとの第2戦が、教訓として生かされている。ゲームの入り方は悪くない。3試合目でもっともいい。
ところが、コートには違和感が漂っていた。
小宮山友祐が言う。
「今日は落ち着いてゲームに入ろうと意識していたんですが、最初から思った以上にやれた。そのぶん、早く先制点が欲しいという意識が強くなったような気がします」
落ち着いてゲームを進めようとする気持ちと、早く点が欲しいという心理は、どちらも前向きなものである。ただ、ピッチサイズがサッカーの4分の1ほどに収まるフットサルでは、選手の心の揺れがすぐに試合内容へ影響する。微妙な変化でさえも、だ。ゴールを逸れていくシュートは、彼らのジレンマを映し出していた。
グループステージ突破へのモチベーションが選手の心身を縛る。
時間の経過とともにリビアのカウンターを受けたのは、日本が前がかりになったことと無関係でない。「前半のうちに点を取りたい、早く楽になりたいという思いが強過ぎて、攻撃から守備への切り替えが遅くなった」と小宮山は話す。「ナーバスになっていたわけじゃないですが、フィニッシュの精度が少し欠けていた」という村上哲哉の肌触りも、先制点への渇望に起因するものだっただろう。
それだけに、前半17分に生まれたゴールは、チームを重圧から解放するはずだった。ところが、リードはわずか10数秒で消滅してしまう。相手のFKがカベに当たり、コースの変わった一撃がGK川原永光の逆を突く。残り2分強でスコアは動かず、1-1のまま前半の20分が終了した。
ミゲル・ロドリゴ監督の脳裏には、W杯の出場権を獲得したアジア選手権準決勝がよぎっていた。オーストラリアとの一戦は、前半を0-0で折り返した。後半もなかなか得点が奪えない。選手たちの表情は強張り、何かの罰を受けているかのようだった。
ロッカールームに戻ってきた選手たちに、ロドリゴ監督は問いかける。リビアを倒してグループステージ突破の権利を得るというモチベーションが、選手の心と身体を縛っていると指揮官は感じていた。