フットサル日本代表PRESSBACK NUMBER
サッカー日本代表が辿った道程へ。
フットサルW杯の健闘が残したもの。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO
posted2012/11/12 11:35
敗退が決まり、観客席に向けて挨拶を繰り返していた“SAMURAI5”のメンバーたち。「後悔はない。でも『もっとこっちだ!』という声をかけられなかった。ピッチでチームを引っ張れないもどかしさがありました」とコメントしたカズ。
アウトオブプレーでストップするプレーイングタイム方式の時計が、残り1秒となった。ボールがキックインされた直後、アリーナに試合終了を告げるブザーが鳴り響く。
ピッチ上にコントラストが描かれる。ウクライナが歓喜を爆発させるそばで、日本の選手たちは落胆に包まれていた。ミゲル・ロドリゴ監督とその仲間たちによるフットサルW杯の冒険は、11月11日のラウンドオブ16(決勝トーナメント1回戦)で終わりを告げたのだった。
ゲームを動かしたのは、ほんのわずかなズレだった。
キックオフ直後の前半2分、敵陣左サイドの星翔太が、ピッチ中央に横パスをする。これがウクライナの選手に渡ってしまった。
フィールドプレーヤーの最後尾にいる小曽戸允哉からすると、判断の難しいパスだった。無理にパスを受けようとしたら、一発で相手と入れ替わってしまいそうな間合いだった。慌てて飛び込むのはリスクが大きい。小曽戸はパスを受けに行かず、自陣にステイしての1対1を選ぶが、相手選手のスピードの変化に翻弄されてしまう。豪快な一撃が日本のゴールに突き刺さり、いきなりビハインドを背負った。
想定内だったはずの攻撃にたじろぎ、失点を重ねたサムライたち。
ウクライナがカウンターアタックを得意とするのは、日本も十分に承知している。「不用意な形でボールを失わないように!」というロドリゴ監督の指示を、誰もが胸に刻んでいる。
にもかかわらず、警戒していたパターンから失点を喫した。選手たちの気持ちが揺れる。スターティングファイブに名を連ねる北原亘は、ピッチ上に戸惑いが広がるのを感じた。
「この試合一発目のカウンターで失点してしまったので、無理に攻めにいくとカウンターを食らうという考えと、点を返さなきゃいけないという2つの考えが、チームのなかに混在してしまったのかな、と。それがまた、カウンターを呼んでしまった」
4分、GKのフィードから左サイドを突かれ、またしてもゴールを割られてしまう。9分には自陣ゴール前でボールを奪われ、スコアは0-3となる。
ロドリゴ監督は直後にタイムアウトを取るが、負の連鎖は止まらない。
誰にも止められない。