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スキージャンプの注目は“-4cm”。
新ルールに日本勢は対応できるか?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2012/10/23 10:30
今年3月に蔵王で行なわれたワールドカップで個人初優勝を飾った高梨沙羅。ジャンプ女子が、正式種目として採用されるソチ五輪でのメダル候補として期待されている。
わずか0.5のBMI数値の変更で、塗り変わった勢力図。
それは成績にどう表れたか。
象徴的だったのは、バンクーバー五輪で圧倒的な強さで2冠に輝き、ワールドカップの年間総合順位でも'09-'10年は総合1位、'10-'11年は2位と強さを誇っていたシモン・アマン(スイス)が昨シーズンは総合順位で11位に、'09-'10年は3位、'10-'11年は1位だったトーマス・モルゲンシュテルン(オーストリア)が7位にそれぞれ沈んだことだ。
かわって昨シーズン、ワールドカップ総合優勝を飾ったのは、29歳(昨シーズン時点)のベテラン、アンデシュ・バーダル(ノルウェー)であった。'09-'10年は36位、'10-'11年は14位であるから、大躍進であり、若手の成長株でもないバーダルの活躍は、予想外とも言えた。
アマンの場合、ルールの変更にあわせて体重の増加を図り、同じ長さの板を履けるようにしてシーズンに臨んだという。だが、体重の増加に対応すべき技術の修正が追いつかず、不振に終わった。
つまり、アマンなど優れた技術で活躍してきた選手はわずか0.5のBMIの変更への対応に苦しんだ。それに対して、どちらかと言えばパワー系のジャンパーであるバーダルには影響が少なかったのではないか。それが浮上できた理由だと考えられる。
高梨沙羅をはじめ、新ルールへの準備を始めた日本勢も。
些細に思える変更が大きく影響を及ぼす、それがスキージャンプという競技であり、いかに繊細な競技であるかを表してもいる。
ジャンプスーツのサイズの変更は、板が短くなったときと同様に、浮力の減少につながる。だから、進境著しい女子の高梨沙羅は、今秋の海外遠征の際、新スーツに慣れることを大きな目的にしたという。そのときはまだ再変更がされる前だったが、従来の6cmから2cmに変わるだけでも、浮力への影響は大きい。
高梨にかぎらず、昨シーズン、日本勢は、ワールドカップで4度優勝し、総合4位と活躍した伊東大貴や、しばしば入賞を果たした竹内択などが台頭し、男女ともに健闘したシーズンであった。
シーズン開幕は間近。
日本勢が新ルールにどう対応していくのか、注目されるポイントとなる。