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マンUと香川真司の冒険は続く――。
“ダイヤモンド型の中盤”という革命。  

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byAP/AFLO

posted2012/10/24 12:40

マンUと香川真司の冒険は続く――。“ダイヤモンド型の中盤”という革命。 <Number Web> photograph by AP/AFLO

前半28分にスライディングで左膝を負傷した香川だが、その後も攻守にわたって果敢なプレーを披露。自ら交代を申し出ることなく、前半最後までピッチに立った。

ルーニー、香川、ファンペルシの3人が奏でたハーモニー。

 前半27分のこと。相手のフリーキックの場面で、ルーニーが香川に合図を送った。お互いのポジションを一時的に変えるためだ。これ以降、トップ下のルーニーが左のセンターMFに移り、香川がダイヤモンドの頂点であるトップ下に入る。

 この形から見事なハーモニーを奏でたのが、前半34分だった。下がり目の位置にいたルーニーがグラウンダーのパスを出す。ペナルティエリア手前でコースに入った香川がこれをスルー。ペナルティエリアにさしかかるところにいたファンペルシが受けると、エリア内にショートパス。そこに走り込んだ香川が受けて、クロスを送り、ファーサイドでエルナンデスが押し込んだのだ。

 やや不可解な判定でオフサイドとなり、ゴールは取り消されたが、ルーニー、香川、ファンペルシの3人が連動して、相手守備陣に対応する隙を与えなかった。

 香川が左のセンターMFとしてプレーする際、ときにはダイヤモンドの頂点でプレーしてルーニーの役割を担ってもいい。この場面はダイヤモンド型であるからこそ生まれた、貴重なワンシーンだった。

 痛みをこらえながらプレーした香川だったが、ハーフタイムをもって交代を余儀なくされた。後半からは代わりにナニが入ったことで、ユナイテッドは伝統的なワイドの選手を置いた4-2-3-1へとシフトチェンジ。エバンスとエルナンデスの2ゴールによって、逆転に成功。ホームゲームにもかかわらず一時は2点のリードを奪われたユナイテッドは伝統の力をもって、最後はしっかりと勝ち点3を手にした。

伝統的な戦い方と新たな戦い方――2本の矢を手にするために。

 試合後にファーガソン監督は、この試合の前半における挑戦は決して間違いでないと強調しつつ、試合をこう振り返った。

「ダイヤモンド型のフォーメーションは我々にとって重要なものだと確信している。ただ、0-2になってしまえば、相手チームがゲームを殺すのは簡単だ。だから、我々はナニを右サイドに、ルーニーを左サイドに回して、(状況を)変えなければいけなかった」

 新たな歴史の扉を開けるのは、容易ではない。今後も、この冒険は続いていくことになる。ただ、簡単な道ではないからこそ、挑戦する価値があるのもまた事実だ。もし、この道を究めたとすれば、ユナイテッドは伝統的な戦い方と、新たな戦い方の2本の矢を手にすることが出来るのだから。

 さて、気になるのは、新たな扉を開けるためのキープレーヤーの1人である香川の状態だ。

 前半28分のスライディングで膝を痛めたことで、不本意な途中交代となった。試合が終わった直後にファーガソン監督は「(怪我の状態については)明日の朝に確認することになる。ダメージがどれくらいなのかを語るのは早すぎる」とメディアに向けて釘をさしつつ、怪我をしてから約20分間の香川の振る舞いについてこうたたえている。

「彼は怪我をしたあと、約20分にわたり戦っていた」

【次ページ】 負傷後の必死なプレーに感じた、香川の意気込み。

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