プレミアリーグの時間BACK NUMBER
早くも'14年W杯の優勝は諦めムード?
ホジソン率いるイングランドの憂鬱。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/10/24 10:31
ジェラードが出場停止だったサンマリノ戦でキャプテンマークを巻いたルーニー。ジェラードが代表を引退すれば、「次のキャプテンはルーニー」だとホジソン監督も発表している。
10月17日のポーランド戦(1-1)をもって、イングランドは年内のW杯ブラジル大会予選を戦い終えた。
成績は、グループHトップの2勝2引分け。だが、これほど説得力に欠ける「無敗」と「首位」も珍しい。2つの白星は、格差が歴然としていた、第1節モルドバ戦と第3節サンマリノ戦で上げたもの(いずれも5-0)。難敵であるウクライナとの第2節とポーランドとの第4節では、それぞれ、フランク・ランパードのPKと、ウェイン・ルーニーの幸運なゴールで、負けずに済んだ恰好だ(いずれも1-1)。
2位モンテネグロとの差は、1試合多く消化しているにもかかわらず、僅か1ポイント。失態を演じたわけでもないが、グループリーダーとして主導権を握ったわけでもないのである。
この可もなく不可もない戦いぶりは、「最も無難な人選」と言われた新監督のキャラクターが、そのままチームに反映されているかのようだ。
EURO2012直前に就任が決まったロイ・ホジソンにとっては、9月に始まったW杯予選が、代表監督としての本格的な仕事始め。4年契約を結んだベテラン監督は、2014年W杯とEURO2016への出場を前提として、「世代交代の実現」と、「受け身のサッカーからの脱却」という任務を背負っている。いずれも、一朝一夕に達成できる任務でないことは、誰もが承知の上だ。しかし、予選4試合に敗戦が含まれていたとしたら、慎重すぎる指揮官の適性が問われ始めていただろう。
「無難」の域を超えて消極的だったポーランド戦での4-4-1-1。
ホジソン率いるイングランドは、EURO後の初戦となったイタリアとの親善試合に、4-2-3-1システムで臨んで勝利した(2-1)。新システムは、続くモルドバとの予選第1節でも採用され、攻撃意欲旺盛な戦いを可能にした。ところが、続くウクライナ戦からは、旧システムに逆戻り。先のポーランド戦でも、後方2列での守備を意識した4-4-1-1の布陣が敷かれた。
実力ある相手との公式戦で、戦い慣れたシステムで手堅い試合運びを狙う策には一理ある。だが、ポーランド戦でのホジソンの姿勢は、「無難」の域を超えて消極的だった。その象徴が、右サイドで先発したジェイムズ・ミルナーだ。ホジソン体制で最も多く起用されているミルナーは、ハードワークが最大の売り。ウィンガーというよりも、2列目のサイドバックという表現が相応しく、言わば堅守要員でしかない。