香川のアシストから反撃ののろしをあげるユナイテッド。

　もっとも、歴史への挑戦が順調に進んだわけではない。

　ユナイテッドは、前半2分、20分と相手の左サイドからのクロスにより、立て続けに失点。いきなり2点のビハインドを負うことになった。

　このフォーメーションの問題点の一つは、サイドの守備がおろそかになるところにある。ワイドに開いた選手がいる場合には、自陣のサイドの深い位置ではサイドのMFとサイドバックの2人がかりで守備をすることが出来る。ただ、今回のようにセンターMF（右にクレバリー、左に香川、中央にフレッチャー）が3人いると、中央の守備は厚くなるものの、サイドはどうしても手薄になってしまう。

　それでも、ユナイテッドは前半25分に、反撃ののろしをあげる。

　2トップの一角ファンペルシが左サイドの高い位置で、ブラガの選手2人を相手に突破を試みる。ファウル気味のタックルをうけて、このオランダ人FWは倒されてしまうが、こぼれたボールが香川の元へ転がる。香川はファウルをアピールしてプレーを止めずに右足でトラップしながら時計回りに反転すると、ファーサイドにクロスを送る。そこに飛び込んだエルナンデスがダイビングヘッドでゴールを決めたのだ。ファンペルシ、香川、エルナンデスの個の力でゴールが生まれたのだ。

負傷はしたが、香川の良さが表れていた激しいスライディング。

　その直後の前半28分。香川は、自陣左サイドのタッチライン沿いで激しくスライディングに行く（このとき、左ひざをピッチにとられてしまい、負傷することになるのだが、それについては後述する）。これは、前述のとおり、サイドの守備の欠点を補う重要なプレーであった。

　攻撃的なMFである香川だが、守備の意識は高い。昨季まで所属していたドルトムントが香川との契約延長を熱望した理由の一つに、攻撃的なポジションの選手でありながら、守備に汗を流すことをいとわない姿勢を高く評価した点があげられる。実際、香川と入れ替わるようにドルトムントに加入したロイスは攻撃面での能力は申し分ないものの、先週行われた宿敵シャルケとの試合で、緩慢な守備から失点の一因を作ってしまっていた。

　この試合、香川が守備で見せた試みは、見落とされるべきではないだろう。それでは、攻撃面ではどうだったのか。

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