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CSに強い“安打製造機”内川聖一。
常勝ソフトバンクでの意識変革とは?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/10/10 12:25
2008年の横浜時代にセ・リーグの最多安打を記録していた内川が、今季はパ・リーグでも同じ記録を獲得。「(今シーズンは)いい状態じゃなかったので、タイトルが取れるとは思わなかった」とコメント。
どんな状況にも合わせられる変幻自在のバッティング。
初回の第1打席。内川は西武の先発・帆足和幸の内角のカットボールに詰まらされサードゴロに倒れた。
内角を無理して引っ張るよりも流したほうがいい――。本来、レフト方向への打球を好む内川だが、その意識を捨てた。
そして迎えた第2打席で彼は、帆足の外角低めのボールを強振し、ライト後方への三塁打を放った。
優れた洞察力。この打席での結果を評価すれば、このひと言に尽きるだろう。
しかし、それ以外にも内川の打者としての特異性が表れていた。
内川のストライクゾーンは一般的な範囲と全く違うところにある。
それについて、横浜時代のチームメートで現野球解説者の仁志敏久は、こう表現していたことがある。
「バッターとしての内川は総合的に優れていますけど、だからといって、パワーがあるとかスイングが速いとか、特別すごい何かを持っているわけではないんですね。ただ彼には、他のバッターとは違うところがある。それは打つポイント。空間と言い換えてもいいと思うんですけど、打つ瞬間に、『このボールはどこに飛ばしたほうがヒットになりやすいか』という明確な感覚が、人よりも掌握できているんだと思います」
そういえば、内川本人もこんなことを言っていたことがある。
「一般的なストライクゾーンというのはあるんでしょうけど、自分が決めたストライクゾーンというのは、それと全く違うところにあるんで。それに、カウント別とか球種とか、型にはまったデータも自分には当てはまっているとは思っていませんから。自分のゾーンで打てる球が来たらしっかり打つ。それが、結果にも繋がっているんだと思います」
凡打を教訓とし、次の打席に結果として繋げる洞察力。そして、自分の空間を把握しながら的確にヒットゾーンに打球を運べるバットコントロール。これこそが、「安打製造機」と呼ばれる内川の神髄なのだ。