日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
戦術変更も“基本”を忘れた日本代表。
コートジボワール戦の虚しい収穫。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2010/06/07 12:20
チームの歯車が狂い、周囲との連動を欠いた日本代表。
守から攻への切り替えの難しさには、システム上の問題もある。前半、4-2-3-1のトップ下に入った長谷部誠はアンカーのトゥーレ・ヤヤをケアし、阿部勇樹、遠藤保仁のダブルボランチが2列目を見るなど、日本は相手の4-3-3システムにはめ込むような形で臨んだ。守の部分では相手をつかまえる意味で効果はある。ただ、攻に切り替えるときには自分と対峙する相手を振り切らなくてはならない。そのためにはもっと運動量が必要になってくるし、どう攻撃するかという共通意識、周囲との連動が大切になる。
日本はペナルティーエリアに侵入してのプレーができなかった。苦し紛れのシュートを打つしかなかった。チーム全体で歯車が狂っているのが見てとれた。
サイドバックが上がろうにも上がれなかったのは中盤にタメがなかったからであり、パスを回そうにも回せなかったのは受け手がうまくマークを外せなかったせいでもある。ロングボールを蹴ろうにも前線の動き出しがなければ意味がなく、1対1の局面で負けていれば前がかりにもなれない。
ケガ明けの中村俊輔や内田篤人らこれまでのレギュラーが外れ、本田圭佑を筆頭に新しく構成したメンバーに、攻撃面での意識の共有を求めるのは難しい。とはいえ、このままの状態で本大会に突き進んでしまえば、カメルーンのゴールマウスを脅かすことなど絶対にできない。
システムが変わっても、やるべき基本は変わらない。
ゲームキャプテンを務めた長谷部誠は試合後、危機感をあらわにして強い口調で言った。
「イングランド戦のほうがチームとして闘うことができていたと思う。もっともっとリスクを冒して、飛び出していってプレーしていかないと相手は怖くない。誰かがじゃなくて、チームとして走らないといけない。システムは変わっているけど、今までやってきたことの基本は変わらない。ボールを追うとか、切り替えの速さとか、今はそのあたりがやっていて足りないなと感じているし、取り戻していかないといけない」
もちろん、本大会前の親善試合の勝ち負けに一喜一憂する必要はない。
コートジボワール戦をピッチ横から見つめていたチームキャプテンの川口能活は、「こういう本当に強い相手とやれたことが何よりの収穫」と“仮想カメルーン”として最適の相手と戦えたことを前向きにとらえている。
得点を奪わなければ勝利はなく、当然ながらグループリーグ突破もない。
コートジボワールに突きつけられた攻撃の課題を、どう解決できるか。これからの1週間にすべてはかかっている。