日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
戦術変更も“基本”を忘れた日本代表。
コートジボワール戦の虚しい収穫。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2010/06/07 12:20
夜はダウンジャケットが必要になるほど肌寒くなる高地のスイス・ザースフェーから車で90分かけてシオンの町に下りてくると、汗ばむ陽気に包まれていた。
キックオフ時間(昼の12時30分)の気温をスタンドの記者席で測ってみると24度。合宿で疲労がピークに達しているだけでなく、この寒暖差の影響も考えれば岡田ジャパンが厳しい戦いを強いられることはある程度予想できた。
かすかに見えた希望の光を打ち消す過酷な現実。
だが、岡田ジャパンに待ち受けていたのはもっと過酷な現実だった。イングランド戦で見えたかすかな希望の光を消してしまうほど打ちのめされてしまった印象だ。
日本は何しろ1対1の局面でほとんど勝てなかった。セットプレーからの2失点に岡田武史監督は「流れのなかでシュートを打たせることはなかった」と引いてブロックをつくって対応するディフェンスへの手ごたえを強調したが、もしコートジボワールが得点追加に躍起になっていれば2-0では済まなかったはずである。
ドログバが負傷退場してからのコートジボワールは、リードしていることもあって無理に攻めてくることはなかった。日本にボールを持たれてしまっても体を寄せていけば、相手はことごとくミスをしてくれる。追加点はいずれ奪えるだろうという余裕が伝わってきた。
岡田ジャパンの今回の最大のテーマは、守備的に戦いながらも、どうやって点を取るか、ということ。指揮官始め、選手・スタッフは流れのなかで得点を奪われなかったことよりもむしろ、攻撃の形がつくれなかったことに目を向けるべきであろう。
守備戦術を変更も“いつもの課題”に後戻り。
岡田ジャパンは韓国戦での完敗以降、守備のアプローチを「前線からの激しいプレッシング」から「引いてつくるブロック主体」に切り替えた。これは守備のための守備ではなく、あくまで攻撃に活かすための手段として監督が決断したものだ。
本大会では守備に追われる時間が長くなることを想定して、守備による体力の消耗をできる限り減らして攻撃に余力を残しておく、という狙いはわかる。先のイングランド戦では攻撃時に遠藤保仁にフリーでボールを持たせるために、周囲が守備の負担を負うことで攻撃にうまくつなげたシーンが何度かあった。守から攻への切り替えが速く、かつ、人数をかけて連動した攻撃ができれば、強豪相手でも有効だと確信を持てたはずだった。
しかし、日本より身体能力が格段に勝るコートジボワール戦では、相手に強めのプレスをかけられると、守から攻への切り替えの時点でバタついてしまっていた。パスの出しどころもなければ、岡崎慎司を単純に裏に走らせるようなロングボールも少なかった。今回のスイス合宿で取り組んできたサイド攻撃にしても、選手間の距離が遠くてサイドにボールを運ぶ形をつくれなかった。引いて守るブロック主体の守備だと、ボールを奪っても攻撃が低い位置からのスタートになってしまう点も、ボールを自由に前線に運べない理由のひとつだろう。